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燃ゆる大空

1940年、東宝映画、北村小松原作、八木保太郎脚色、阿部豊演出作品。

陸軍省が東宝と映画科学研究所に作らせた国策映画なのでストーリーそのものは単純。

飛行学校の教官、山本大尉(小日方伝)に鍛えられた航空部隊の新人の仲良し四人組、田中(伊東薫)、佐藤(灰田勝彦)、山村(大川平八郎)、行本(月田一郎)が、2年後、送り込まれていた北支戦線の仁禮(高田稔)部隊で、新たに配属されてきた山本大尉と再会を果たす。

田中はすでに名誉の戦死をしており、佐藤も、その後、奈良大尉(佐伯秀男)部隊の爆撃に参加し、撃墜され、一命は取り留めたものの、その後自決。

さらに行本も・・・というもの。

後半に、軍医の大橋大尉として、長谷川一夫がチラリとカメオ出演しているのが珍しいくらいか。

一方的に日本軍のパイロットたちの成長と勇敢な戦死を描くのが目的らしく、敵の描写などは一切ない。

敵の描写がないという事は、ドラマ的な盛り上がりは薄いという事である。

この作品、円谷英二と奥野文四郎の名前が特殊技術撮影としてタイトルに出てくるが、劇中、大半のシーンは「実機使用」というハリウッドスタイルで撮影されており、後の「ハワイ・マレー沖海戦」(1942)とか「阿片戦争」(1942)など、ミニチュアセットを使用した、いわゆる「特撮映画」のイメージとはかなり違った印象の作品になっている。

特撮と思える所は、操縦席のアップ部分でスクリーンプロセスを使用(?)しているくらいではないか。

数十機の味方機が飛行場から離陸する様や空中戦は、敵味方全て本物の戦闘機を使っている。

中国機などは、戦利品をそのまま使用しているらしい。

空中戦のシーンは機関銃の音を効果音としてかぶせ、撃たれた飛行機はスモークを焚いてきりもみ飛行をするといった感じで、空中爆発や墜落炎上と言った派手な絵柄こそないが、やはり、本物を使ったシーンは全然臨場感が違う。

また、敵地を爆撃している様子を飛行機から写している部分などは、実際の記録フイルムを使っているようにも思えるが、画質のクリアさから考えると、国内で映画用に撮ったものかも知れない。

劇中、「夕空晴れて秋風吹く」などといった歌が効果的に使われており、感傷的なシーンがあるのが日本映画らしいといえばいえる。