1955年、東宝、石坂洋次郎原作、松山善三脚色、筧正典+鈴木英男+成瀬巳喜男監督作品。
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「くちづけ」「霧の中の少女」「女同士」の三編からなる。
「くちづけ」
大学生の河原健二(太刀川洋一)は、国文学の試験中、前の席の夏目くみ子(青山京子)にカンニングをさせてもらうほどの仲良し。
そのくみ子は、同居している姉(杉葉子)が、再婚をするのではないかと言う噂を聞き、複雑な心境になる。
なんだか、姉の行為が不潔に思えたからである。
そんなくみ子の心理に気付いた姉は、亡くなった夫と、結婚前、一度だけ接吻をした思い出話を、恥じらいながらも懐かしそうに告白するのだった。
何となく、姉との間のわだかまりが溶けたくみ子であったが、ある日大学で、健二と一緒に、国文学の長谷川教授(笠智衆)から呼出される事に…。
「霧の中の少女」
家で留守番をしていた農家の家の次女、妙子(中原ひとみ)は、大学生の姉、由子(司葉子)に宛てた級友上村英吉(小泉博)からの速達を受け取る。
何でも、旅行中に立ち寄りたいので、実家に泊まらせてくれないかと言う依頼であった。
妙子は、働く両親にその手紙を見せるのだが、反対する母親(清川虹子)をよそに、父親(藤原鎌足)と祖母(飯田蝶子)に押し切られる形で、宿泊は承認されることになる。
その知らせを聞いた由子は、妙子、弟の信次(伊東隆)と共に、駅に英吉を迎えに行く。
すっかり、家族と馴染んだ英吉であったが、ある日、ひょんなことから、英吉と由子を山の温泉にやることになった母親は心配のあまり、妙子を見張り役として同行させるのだったが…。
「女同士」
町医者、金田医院の妻、朋子(高峰秀子)は、ある日、住み込みの看護婦であるキヨ子(中村メイ子)の布団を干そうとして、隠してあった日記を見付けてしまう。
こっそり読んでみると、何と、夫(上原謙)の事が好きだと書いてあるではないか。
気が気ではなくなった朋子は、何とか、キヨ子を家から出そうと、近所の八百屋の清吉(小林桂樹)を焚き付け、大急ぎで二人の結婚話をまとめようとするのだったが…。
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のんびりとした時代を背景に、進歩型の女学生、思春期の少女、若い他人の娘と同居している妻という三人の女性の心理を、ユーモアも交えて描く素朴な作品集。
「くちづけ」では、子持ちの未亡人役の杉葉子が良い。
「霧の中の少女」では、特に、中原ひとみの少女らしい愛らしさに目を奪われた。
「女同士」では、20歳くらいの中村メイ子も、なかなか可愛らしく魅力的なのだが、ラストに登場する新しい看護婦さんにも驚いてしまう。
何と、絶世の美少女、八千草薫その人である。
その顔を見た妻役の高峰秀子の複雑な表情と言ったら…。
石坂洋次郎原作ものらしい、心暖まる好編ぞろいになっている。
