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河内山宗俊

1936年、日活太秦、三村伸太郎脚色、山中貞雄原作+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

浪人、金子市之丞(中村翫右衛門)は、森田屋の親分(坂東調右衛門)に使えている用心棒。
今日も、縄張り内で商売をしている者たちから「ショバ代」を集金している。

しかし、そんな金子が唯一、目こぼしをしてやるのが、若い女手一つで甘酒を売っているお浪(原節子)だった。

そのお浪にはヒロ太郎(宗春太郎)という弟がいた。

このヒロ太郎、最近素行が宜しくない。

たまたま、甘酒屋にやって来た、家老北村大膳(清川荘司)の刀のこづかをこっそり抜き取って盗んでいたのだ。

そのヒロ太郎、インチキ賭将棋の丑松(助高屋助蔵)が、まんまと客に騙されて50両という大金を払うはめになった現場を見ていた。

ヒロ太郎は、その後、最近入り浸っている賭場を兼ねた馴染みの酒屋で、先ほどの客を目撃、その人物こそが、この家の主人でもある河内山宗俊(河原崎長十郎)であると知り、挨拶をする。

しかし、姉が心配して探しに来たので、直次郎と変名を使って。

挨拶の印にと宗俊に吉原に連れて行かれたヒロ太郎は、そこで、幼馴染みのおみち(衣笠淳子)に出会う。

その後、弟を心配するお浪を気にかける二人、金子と宗俊は、ひょんな事から顔を合わせ、最初は対立しそうになるが、すぐに仲直りし、すっかり意気投合してしまう。

やがて、思いつめたおみちと、成行き上、入水心中に付き合ったものの、自分だけ生き残ってしまったヒロ太郎は、死んだおみちの代金300両を払えと森田屋の親分に迫られ、自ら身を売る決意をした姉お浪の後を追う事に。

事の次第を知った金子と宗俊も、何とか、お浪を助けようと立ち上がるのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

現存する山中監督の3本の作品の一本。

悪僧として有名だった河内山宗俊というキャラクターを、人情肌の良い人物として描いているのが特色。

監督独特のユーモア表現も健在で、こづかの行方をめぐって、とぼけたエピソードが展開するのだが、これが、後半、本筋に絶妙に絡んでくる辺り、巧いというしかない。

一方で、薄幸の美女お浪こと、原節子をめぐる哀しい顛末も描かれており、これらユーモアとペーソスが絶妙の交差振りを見せながら、クライマックスの剣劇シーンへと繋がって行く。

いわばアウトロー的存在である宗俊や金子らが、命を賭けて守りたいと感じさせるほど、お浪の美しさと可憐さは不可欠な要素であるが、若き原節子はその役を見事に演じ切っている。

人情話や時代劇好きなら、今観ても十分楽しめること請け合いの秀作である。