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石の花

1946年、ソビエト、P・パジョフ原作+脚色、アレクサンドル・プトゥシコ監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

工場内の空き地で一人たき火を燃やしている老人。

そこへ、何人もの子供達が近づいてきてお伽話をせがむ。

老人は、表面上は嫌がりながらも、いつものように昔話を始めるのだった…。

「石の心を読むことが出来る」とまでいわれた孔雀石の細工名人プロコーピッチ(ミハイル・トロヤノフキー)も、よる年並には勝てず、病気がちになっていた。

それを知った領主の使いセベリヤン(M・ヤンシン)は、それなら、子供を集めて来るから、お前の技を伝授しろと命ずる。
しかし、才能と根気のありそうな子供は一人もおらず、セベリヤンは、かんしゃくを起こして、一人残らず子供を追い出してしまう。

そんな村に、おじいさんと共に牛の世話をしていた少年ダニーラがいた。
彼は、夢見がちで角笛が得意な美少年だったので、銅山の女王(タマーラ・マカーロワ)はトカゲに化けて彼の姿をこっそり観察していた。

そのダニーラが見張っていた牛が一頭、狼に喰われてしまう。
領主に詫びにいったおじいさんが、セベリヤンにむち打たれそうになったので、ダニーラは自分の責任だと名乗り、鞭うちの刑を受けるのだったが、彼の我慢強い態度を観ていた領主は、彼をプロコーピッチの弟子として預けることにする。

ダニーラの何気ない言動から、彼に才能があることを見抜いたプロコーピッチは、彼を大切に育てはじめる。
青年になる間では、石の粉を吸って身体を害さぬよう、仕事を一切させなかったくらい。

そんなプロコーピッチに、とある貴族から手箱の注文が入る。
何でも、パリで出会った公爵に自慢するつもりで、凄い手箱を持っているといってしまったからだという。

しかし、もはや老いたプロコーピッチに、手箱を仕上げる体力も気力も残っていなかった。

やがて、期限の日が来て、完成品を受け取りに来た貴族とその妻に、病気で衰弱しきっていたプロコーピッチは、ひざまずいて謝罪しようとするのだが、それを制した青年ダニーラ(ウラジミール・ドルージニコフ)は、いつの間にか完成していた見事な手箱を披露するのであった。

ダニーラが作ったことが判り、彼に才能があることに気付いた貴族の妻は、花の形をした鉢を追加注文をする。

長い月日を経て、見事な鉢を完成させたダニーラだったが、芸術家特有の理想を追い求める姿勢から、完成品に満足できないものを感じていた。

そんな彼に、プロコーピッチは、伝説の「石の花」の話を聞かせる。

その花に異常な興味を持ちはじめたダニーラは、恋人のカーチャ(デレーヴシチコフ)との結婚式の当日、銅山の女王の声に導かれるように、完成した鉢を自ら破壊すると、石の花が咲くという森の中に一人さまよい入っていくのであった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

戦後、日本ではじめて公開されたカラー作品。

合成や、巨大な仕掛けを施したセットを融合させて描く特撮ファンタジー映画でもある。

ストーリーの骨格自体は、アニメ「雪の女王」にも似ている。

愛しあった男女の男の方を、魔法を使う女王が奪ってしまい幽閉する。
残された女が、愛する男を取り戻そうとするというもの。

魔法の力が勝つか、愛の力が勝つかというテーマである。

依頼された鉢を作る間、ダニーラと会えず、独り待ちくたびれていくカーチャの姿を、彼女が佇む川面に写るものが、季節ごとに変化していくことによって表現する技法等、高度なことをやっている。

カーチャが女王と出会い、ダニーラを取り戻すために、魔法のかかった森の中を突き進んで行く所等、動く木などが、仕掛けで見事に表現されている。

女王が住む巨大な洞窟内のセットも美しいという他はない。

時々挿入される、古いロシアの歌や踊りも興味深い。

今観ても色褪せない、ファンタジー映画の古典的名作である。