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ヒーローインタビュー

1994年、フジテレビ+ホリプロ、野島伸司+山崎淳也脚本、光野道夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

東京経済新聞社、経済部で活躍していた沢木霞(鈴木保奈子)は、ある日、突然、上司(北村総一朗)からスポーツ部へ移動を命ぜられる。

彼女の恋人であるエリート社員の石井(鶴見辰吾)からも、どうせ、間近に迫った結婚までの辛抱だからなどと、言い包められてしまう始末。

高層ビルの地下深くにある、いかにも暗くて閉鎖的な部署で、霞は、格闘技担当の山本(関根勤)、競馬担当高橋(渡嘉敷勝男)など、スポーツ部にたむろする変わり者たちと出会う。

そして自分は、何故か、プロ野球担当の星野(いしだ壱成)と組まされ、訳も分からないまま、ヤクルト、横浜戦取材のため神宮球場に出かける。

そこで、霞が目にしたものは、ピンチランナーに起用されながらも、無理なスタンドプレーでチャンスを潰してしまったヤクルトの轟仁太(真田広之)選手の姿であった。

かつては「神宮のイナヅマ」とまで称されていた名選手だったが、3年前に頭に受けたデッドボール事故以来、ぱたりと打てなくなり、すでに30半ばの彼は、この夜を最後に梶原監督(武田鉄矢)から二軍落ちを宣告される。

その夜、取材のまずさから現場に一人取り残されてしまった霞は、近づいてきた仁太から特ダネを買わないかと誘われるのだが、結果的にそれはガセネタ以前の「からかいネタ」だった。

その仕打ちに逆上しながらも、何となく、彼のことが気になりはじめた霞は、二軍への取材へと足を向け、そこで、仁太の一人娘である球子(安達祐美)と出会う。

聞けば、仁太は妻とは別れ、今や、残された球子と二人で借金取りに追われるみじめな生活を送りながらも、表面的には軽薄なプレイボーイとして、自暴自棄ともとれる毎日を送っているらしい。

霞は、一方で、パリ栄転が決まった石井との結婚話に何となく付き合う一方で、スポーツ選手としてみじめな終末を迎えそうな仁太に、どんどん気持ちが傾いていく自分に気付いていく…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ひょんな事から、イヤ〜なタイプに思える男性と出会い、最初は毛嫌いしながらも、やがては、その魅力にとりつかれ…という、典型的な少女趣味ラブコメコミックを映画化したような感じの作品。

冒頭のゲームでは、仁太から露骨な弥次を受けている横浜のピッチャーに岸谷五朗、それをなだめに来るキャッチャーに肩までのロンゲという考えられないようなスタイルの江口洋介などが登場、さらに、クライマックスでは、東京タワーを中心としたきれいな都会の夜景と、CHAGE&ASKAの粘っこい歌声がムードを盛り上げていく…という、正に若い女性層が喜びそうな徹底したサービス振り。

逆にいうと、そういうターゲット以外の客層には、面白いも何も、リアリティのかけらのない空疎な内容になっており、超客層限定映画ともいうべき仕上がりになっているのが特長。

プロ野球を素材としながらも、実際のプロ野球選手はほとんど登場せず、せっかくヤクルトの話なのに、古田や池山といったスターが一画面も登場しない辺りにも、男性客を全く想定していないことがうかがわれる。

クライマックスの展開も、ほぼ想像通りのもので、意外感はあまりなく、凡庸なストーリーを、プロ野球という、ちょっと珍しい素材と組み合わせてみました…という感覚だろうか?

しかしながら、この公開時期、邦画実写ものとしては、東宝のゴジラや松竹の寅さんなど男性向けの定番ものしかなく、若い女性向けの実写ものというジャンルは空白状態だった事もあり、スマッシュヒットになったようだ。

今、世代を超え、男性客をも吸引し、定着した観のあるフジテレビ製作映画の基本的な映像感覚は、全て、この時点で出そろっている感じがする。