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チョコレートと兵隊

1938年、東宝映画、小林勝原作、鈴木紀子脚色、佐藤武演出作品。

ちなみに、製作主任は本多猪四郎である。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

お盆間近い夏のある日、印刷屋に勤める斎木(藤原鎌足)は、10才になる息子の一郎(小高まさる)と、まだ幼い妹の千代子(若葉きよ子)、それに印刷屋の娘茂子(高峰秀子)を連れて、川で魚釣りを楽しんでいた。

一人釣れているのは、良い竿を使っている斎木だけ、全く釣れない一郎はそれが面白くないのだ。

茂子は、そんな一郎の気持ちをほぐそうと、チョコレートを取り出すと、皆に分け与え、包装紙は川に捨ててしまう。

ところが、その包装紙を慌てて拾う一郎。

実は、その包装紙には点が付いていて、100点貯まると、もう一枚チョコレートがもらえるのだという。

そんな仲睦まじい家族に、ある日、役所から召集令状が届く。

妻(沢村貞子)は、出征の夜、一人寝床から起き出して、以前、夕食の時に、一郎がいたずらして壊してしまった千代子の大切な鏡を修繕してやっている心優しい夫の姿を目撃する。

出発の朝、途中の駅まで、父親に付いてきた一郎は、斎木が大好きだった晩酌用の盃を手渡し、戦場でも、これで酒を飲んでくれというのだった。
戦場というものを何も知らない一郎だった。

やがて、中国上海に上陸した斎木は、同じ釣りが趣味だという渡辺(津田光男)と知り合い、彼と一緒に、他の兵隊が捨てていたチョコレートの包装紙を集めては、内地の一郎に手紙と共に送るのだった。

受け取った一郎は大喜び、1300点分もあるというので、茂子が直接、チョコレート会社に送ってやる。

それを受け取ったチョコレート会社の社員(霧立のぼる)は、事情を手紙で読み、感動して、大量のチョコレートを送るのだった。

そんなある日、一郎は、父親が大切にしていた釣り竿をこっそり持ち出すと、川で大きな魚を釣り、大喜びで帰宅するのだが、その途中で、自分の家を訪ねるおじさんと出会う。

実は、彼は、妻に斎木の戦死を知らせに来たのだった。

その事を、母親から打ち明けられ泣き出す一郎の前に、無邪気な千代子が送られてきた大量のチョコレートを嬉しそうに渡すのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

長らくアメリカに没収されていて、あちらで、日本人研究用に使用されていたらしい幻の国策映画。

本作を観たフランク・キャプラをして、「このような映画に我々は勝てない。こんな映画は10年に1本作れるか作れないかであろう。大体役者がいない」と言わしめたという作品である。

「戦意高揚映画」として優れているという意味であろうか?

しかし、今の我々が観て、本作に好戦的な意図は全く感じない。

市井の小市民生活を淡々としたタッチで描いた泣ける名作という方が正しいと思う。

そうはいっても、この作品、子供向けなのか大人向けなのか、さらに一体誰が主人公なのかなどがはっきりしない、不思議な作品ではある。

チョコレートの贈り物が届いた時点で、普通は「終わり」だと思うのだが…。