1953年、エイトプロ、永井龍男原作、長谷川公之脚本、長谷部慶治監督作品。
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オールスター戦が行われている満員の後楽園球場で、弁さんこと、蕎麦屋の井上弁吉(三井弘次)が、試合に夢中の父親にほったらかしにされて泣いている男の子をあやしながら、片足が不自由な男の後ろ姿を怪訝そうに見送っていた。
何故なら、まだ試合は3回の表、帰るにはおかしなタイミングだったからである。
間もなく、三塁側内野席のスタンドで、売り子からジュースを買った女が、足元に倒れている邪魔な男に気付く。
女の連れが仰向きにさせてみると、何と、その男は死んでいるようであった。
傍に落ちていたバターピーナッツから青酸化合物が発見され、さらに、トイレの中から、毒物の入ったゴムの水鉄砲が見つかり、巧妙な手口の殺人事件と判明する。
毎朝新聞社会部の独身男、ボタさんこと、久保田(舟橋元)は、事件の一報が飛び込んだ瞬間から、キャップの小山(宇野重吉)に出動を命じられるが、折から、知り合いの娘である加藤由起子(香川京子)から要領を得ない電話が入る。
彼女は、30年間新聞記者を勤めた後、今は喫茶店を開いている父親(柳永二郎)と二人暮しをしていた。
その夜、電車が通ると揺れるような安アパートに住む加藤家を訪ねてみると、以前、毎朝の本社に勤めていたが、今は大阪に転勤した久保田の旧友でもある喜多から手紙が来て、由起子との結婚を考えているらしいと知らせてきたのだという。
しかし、鈍感な久保田は、そんな事に全く頓着もしない。
由起子は、本当は久保田との結婚を望んでいたし、久保田も又、由起子の事を憎からず思っていたのだが、仕事に忙殺されている今の状況では、とても、結婚に踏み出すだけの勇気を持てなかったのである。
毒殺事件が行き詰まりを見せる中、久保田は、馴染みの弁さんから声をかけられる。
野球所で見かけた片足が不自由な男とは、良く後楽園競輪場で出会うのだが、あいつが怪しいというのである。
最初は半信半疑の久保田であったが、手づまりが続く中、思いきって、その男を探してみる事にする…。
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本当に満員の後楽園球場で撮影されたと思しき冒頭部分からして、本格ミステリーとしての展開に期待を抱かせるが、謎ときとしては極めて弱いというしかない。
どちらかといえば通俗味に比重を置いた「事件記者もの」といった方が良いだろう。
弁さんと共に事件を追い掛けている内に、美しい被害者の妹(島崎雪子)と出会い、さらに、その女性と瓜二つのホステスにも出会う久保田。
一方、喜多からの求婚に人生の選択を迫られる由起子。
何とか、自分の本心を久保田に伝えて、彼からの求愛を聞きたい彼女であったが、いつでも、久保田は疲れきっており心は上の空。
結局、二人の言葉も気持ちも噛み合わず、すれ違うばかり。
タイトルの「明日はどっちだ」という言葉は、この二人の人生の岐路を暗示しているのかも知れない。
ギスギスに痩せてインテリ風の宇野重吉も興味深いが、普段、強面イメージがありながら、本作では、お調子者の三枚目役を飄々と演じている三井弘二が珍しい。
重要な役所として、芸者の光奴役の高峰秀子と、その光奴と付き合いのある佐庭という男役で池部良が登場するのも見所。
実は、この作品、二木てるみのデビュー作らしいのだが、どこに出ていたのか確認できなかった。
女の子が登場するシーンといえば、足が不自由な男を追って、とある料亭に行き着いた久保田が、生け垣から中の様子を覗き見していると、その様子をまねるかのように、女の子が隣に来て、同じように生け垣を覗くというのがあるのだが、その子の顔は後ろ向きのままで、誰なのか確認できない。
あの子が、二木てるみだったのだろうか?
