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スチームボーイ

本作は、CG雑誌等では7,8年前から一部紹介され、完成が待たれていた作品である。

しかし、何年待っても、その後、完成したという噂は聞かず、1997年には一旦中断。

しょせんはバブル時代の浮ついた企画、押井監督の「G.R.M. THE RECORD OF GARM WAR (ガルム戦記)」などと同様、挫折したのか?…とも思わせたが、ようやく10年近くかかって完成し、今公開されたものである。

その間、あれこれ、裏ではすったもんだがあったらしいが、コミック作家としては、天才的な画力の持ち主として一時代を築いた観のある大友氏の、名前に寄り掛かっただけの甘い企画姿勢に、最初から問題があったらしい。

で、出来上がった作品を観てみると、予想通り、画家の自己満足的な世界になっていた。

確かにビジュアルは凄い。
美術的には、大人をも唸らせる完成度だし、動きも、CG技術等を巧く取り入れて、驚嘆すべきレベルまでに到達している。

だが、その技術的感心以上の感動は…、ないのだ。

空疎なスペクタクルの連続は、途中で飽きてしまう。

おそらく、大友氏には、こういう時代背景で、こういうスペクタクルを…という、絵の天才らしい、ビジュアルイメージはあったのだろう。
それを、アニメで徹底的に再現しようとする熱意も。

しかし、物語、ストーリーで、何か感動を、斬新な事を…というようなビジョンは、特になかったに違いない。作品を観ていて、 ビジュアル面以外のこだわりを何も感じないからである。

もともと、大友氏は、ストーリーで唸らせるタイプの作家ではなかったのだが。

その結果、出来上がったのは、「ラピュタ」+「ロケッティア」+「快傑 蒸気探偵団」みたいな、『どこかで観たような』ものになってしまった。

企画当初は斬新であったかも知れないアイデアが、10年近い時を経る内に「凡庸なもの」に変化してしまったのである。

動きのすごさ、絵のち密さなども、近年続々と発表されつつある、国内外のデジタルアニメを見慣れた目には、かつて、コミック誌上で、大友氏の印刷されたコミックをはじめて観た時のような衝撃感はない。

残念ながら、遅れて来た力作という感じがしないでもない。

それでも、難しい事は抜きにして、普通に楽しめる程度の娯楽活劇にはなっているし、後何年かすれば、「遅れて来た」感じは薄れ、デジタルアニメ大作の初期作品の一本として、マニアの間では、それなりの評価は受ける事になるのではないかと思う。