1953年、新東宝、吉田満原作、八住利雄脚色、阿部豊監督作品。
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昭和20年3月、苦戦を強いられている沖縄防衛のため、第二艦隊の大和を出撃させる「天一号作戦」が決定された。
燃料は片道分、つまり、帰る事のない出航計画であった。
その頃、戦艦大和では、人情派の副長(藤田進)が最後の艦内点検を実施し、一人一人の部下たちに暖かい言葉を掛けてやっていた。
出航に当り、訓練候補生たちは、経験不足のため、実戦ではかえって足手纏いになると退艦を命ぜられ、涙の別れ。
出航後も、血気に逸り神経質になった若き船員たちの間で小さな諍いが起きる。
通信担当の中谷少尉(和田孝)が、日系二世であるという事にからむ兵隊がいたのだ。
それをなだめる大阪のボン、高田少尉(高島忠夫)。
生きて帰る事のない出航に疑問を持つもの。
無邪気な子供そのままの少年兵。
そんな彼らを乗せた大和は、やはて、飛来した敵機に発見され、すでに時代遅れとなった重装備で迎え撃つ事になるのだが…。
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ごく普通の純粋さを持つ若者たちの淡々としたドラマを描く前半、そして、それがあるからこそ生きてくる後半の悲惨な最期。
戦争映画版「タイタニック」ともいうべき作品になっている。
戦艦大和が登場する映画は何本かあるが、本格的に大和だけに絞って描いた作品は本作だけではないだろうか?
反戦映画としても秀逸。
戦後の作品なので、高島忠夫扮する高田少尉が「世界の三大無用の長物、一つは万里の長城、二つ目はピラミッド、三つ目は戦艦大和」などと、とんでもない事を仲間たちの前で発していたりする。
戦時中、心の中では思っていても、実際にそのような言葉を発する事が出来たのかどうか…。
しょっちゅう酒浸りの軍医(里明凡太郎)は、ひょっとすると「宇宙戦艦ヤマト」の軍医佐渡先生のモデルではないかなどと想像したりもする。
特筆すべきは、特撮の見事さ。
大和全体が写る部分こそミニチュアで、スケールが小さいため(しかし、すでに舳先にできる波などは装置で再現している)ちゃちといわざるを得ないが、船体側面部分などの巨大なセットがしっかり作られており、戦闘シーンは結構迫力ある。
ホリゾントに直接描かれた巨大な絵ではないかと思われる部分もあるが、それがマットペイント処理なのかどうかは見分けがつかない。
大和の甲板に数百人の兵隊たちが延々と並んでいる、あたかもスター・ウォーズのようなシーンなど、一体、どうやって撮っているのか不明。(マットペイント併用だとすると、実に絵が巧い)
他にも、ここはどうやって撮っているのだろう?と疑問を感じるような不思議な絵柄が多数出て来る。
隠れた名作である。
