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スクラップ集団

1968年、松竹大船、野坂昭如原作、鈴木尚之脚本、田坂具隆監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

大阪、釜ケ崎の町、落ちぶれた3人の男たちが、飲み屋で、各々の数奇な昔話を披露していた。

九州の閉鎖された炭坑町で、清掃組合員だったホース(渥美清)は、汲取り料値上げのためのストを一人破り、困り抜いていた住民のために、無料で汲取り作業を請け負う事になる。

回収したし尿は、祖父、父親が死んだ山の中のトンネル穴に勝手に流し込んでいたのだが、後に、その場所がゴルフ場として開発された事からばれてしまい、町に住めなくなってしまう。

大学を出た後、貧しい老人たちに生活保護を受けさせるため、ケースワーカーとして役所で働いていたケース(露口茂)は、とある老人(笠智衆)から、不憫な自分の娘(宮本信子)を抱いて欲しいと頼まれる。

後に、その老夫婦と娘が一家心中した事を知ったケースは、自責の念にとらわれ、職を辞める事にする。

清潔好きで、公園のゴミ拾いをしていたドリーム(小沢昭一)は、いつしかゴミに人生の哀感を感じるようになり、それからはゴミを偏愛するあまり仲間たちとうまくいかなくなり、とうとう公園の職を追われ、夢の島へと送られるが、そこも安住の地ではなかった。

3人の話を側で聞いていた中年の男ドクター(三木のり平)は、元医者であった自分も安楽死の研究をしていたばかりに友人を死に追いやってしまった過去を吐露する。

境遇の似通った4人はすぐに意気投合し、互いの趣味と実益を生かして有料スクラップ業を始める事にする。

岡村産婦人科の側に構えた事務所は、次第に仕事も増え、ある程度のまとまった資金がたまった4人は東海地方に事務所を移動する事にする。

そこでは、道路で死んでいた象の死体を見事に処理するというパフォーマンスを市長等大勢の前で見せつけ、たちまち、スクラップセンターの名は広まるようになる。

そんな中、岡村産婦人科で育てられていた私生児春子(奈美悦子)が彼らを訪ねてくる。
実は、自分が妊娠してしまったので、ホースに父親になって欲しいというのである。

何の身に覚えもなかったホースは驚愕するが、ドクターの強引な事業展開に疑問を感じはじめていた所でもあり、思いきって、彼女と一緒に九州に帰る事にするのだった。

後日、ホースと春子の生活振りを心配して見に来たケースは、廃坑をテーマパークのように改造して、客寄せをしている彼らの様子を見た後、自分もドクターの方針に疑問を感じ、職を辞する事になるのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

社会風刺のテーマ性が色濃い、一種のブラックファンタジー。

渥美清扮するホースが、冒頭から派手なパフォーマンスで登場し、一見主人公のようにも見えるが、物語の中核となるのは、醒めた視点を持つケースの方だろう。

非常に生真面目な印象の露口茂の個性が、うまく生きているように思える。

彼が出会う貧しい老人として左卜全やミヤコ蝶々、岡村産婦人科の女医に笠置シヅ子、他にも、左とん平や石井均、十朱久雄などが顔を見せている。

ホースと春子が廃坑を利用して始める「ブラックダイヤパラダイス」なるテーマパークが、あれこれ意味ありげな趣向満載で印象深い。

廃坑の奥1500mの地下深くに広がる「坑道自由ホール」の異様な光景。
ザ・タイガースのジュリー(沢田研二)らが唄う「シーシーシー」の曲の中、踊り狂う若者たち。

赤ん坊が無事生まれ、その名前を、祖父や父の霊に付けてもらおうと、その自由ホールを一人訪れたホースに待ち構えていた運命は…。

実はこの物語、最後は意外な形で終わるのである。

宮本信子や奈美悦子の、あまり今と変わらない印象にも驚かされる。