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沖田総司

1974年、東宝映画、大野晴子脚本、出目昌伸監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

夏の武州多摩、山道を一人の青年が木刀を抱えて走っている。
沖田総司(草刈正雄)である。

川で喧嘩をしている土方歳三(高橋幸治)を助けるためであった。
喧嘩の後、彼らの様子を興味深気に眺めていた女二人組の一人を、土方は当然のように草むらに連れ込む。
しかし、総司の方は、積極的に迫って来た女から逃げ腰になるほど、まだ、うぶな青年だったのである。

子供の頃から、土方や近藤勇(米倉斉加年)らに、弟のように可愛がられて来た総司は、他の試衛館の仲間たち(西田敏行ら)と一緒に、幕府が募集した浪士隊に参加する事になる。
全員、野望を持っていたのである。

京都に到着した総司は、姉に良く似た面影を持つおちさ(真野響子)と出会い、急速に近しい仲になって行く。

しかし、新撰組そのものは、公家たちを中心に、京都では嫌われる存在となっていた。

表向き髪結いをしている密告屋(殿山泰司)から得た情報で、惨い拷問もしていたからであった。

そんな時にも、総司は、陰ながら、最後まで土方に付き合っていた。

そんな総司は、夏風かと思われた症状が徐々に悪化し、とうとう、血を吐くまでになってしまう。
しかし、医者(大滝秀治)のこのままでは後2年生きられるか保証できないという忠告にも関わらず、仲間たちとの行動に付き合い続ける総司だった。

やがて、江戸から伊東甲子太郎(浦山桐郎)一派が新撰組に合流し、何となく、組は分裂状態になって行く。

そんな中、仲間の一人だった山南敬介(河原崎次郎)が、組から脱走を企てる。
馬でその後を追った総司は、途中で病状が悪化し落馬、偶然にも近くにいた山南本人から看病される始末。

山南は、何故か、そんな総司と一緒に組に戻り切腹する事を決心し、総司本人がかつての友人の介錯をする事になる。

いつしか、近藤勇は俗物に成り下がって行き、総司自身は、バラバラになって行く仲間たちの心にいらだつように、人を斬りまくって行くのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

一見、当時モデルとして人気の高かった草刈正雄を使ったアイドル映画のようなイメージだが、実は芸術祭参加の真面目な内容。

青春の野望と挫折という形で描かれている。

日本人離れした風貌の草刈正雄の総司というのは、かなり意外なキャスティングに思えるが、昭和40年のテレビ時代劇「新撰組血風記」以降、複数回、総司を演じた島田順司の人気をきっかけとして、「総司=美形」というイメージが定着し、女性を中心に総司ブームが巻き起こった流れに乗ったものである。

草刈正雄が、総司ブームの原点ではないのだ。

事実、この作品は、公開当時、さほど話題にならなかったと思う。
おそらく、単純なアイドル映画と勘違いされた面が大きかったのではないか。

今、改めて見直してみると、地味ながら、青春ものとしてしっかりした作品になっていると感じる。

芹沢鴨に小松方正、山南の愛人に池波志乃、意外な所では、志村けんそっくりの荒木一郎まで出演している。

後半、時代が変わり、大砲の砲撃にさらされた土方と総司が、刀一つで立ち向かって行く姿は、さながら「ラスト・サムライ」を連想させる。