1968年、東京映画、松山善三原作、山本邦彦脚色+監督作品。
スナック経営をしている杉本(藤村有弘)の息子、邦雄(堺正章)は、子供の頃から自分をしかる事も出来ないくせに金儲けばかりに没頭している父親を軽蔑し、舐め切っていた。
今日も、仲間たちと遊ぶ金欲しさに、父親の金庫に勝手に穴をあけてしまう。
そんな邦雄の様子を心配げにうかがっていた、杉本の秘書兼看護婦の加奈子(星由里子)は彼の無軌道振りを諌めようとする。
邦雄の方も、年上の加奈子には、ほのかな恋心を抱いていたのであるが、素直にその意見に耳を傾ける事はしない。
そんな杉本は、近くデパートを建設しようと目論んでいたのだが、学校を立てたいという彼の言葉を信用し、安く土地を提供していた近所の地主たちは騙されたと猛反対。
彼らは、自分達の息子のたまり場と化しているスナックにも頭を悩ましていたからである。
スナックの常連録郎(井上順)の父親、光妙寺の住職、法念(堺駿二)もその一人。
ある日、彼は、墓の中に置いてあった一個のバッグを発見する。
実はその鞄、杉本の依頼で外国からやってきた怪し気な男ジョージ(佐原健二)が持ち込んできたもので、中には密輸で得た闇ドル1億が入っていたのだが、ひょんな事から、フーテンの青年二人(かまやつひろし、田辺昭知)の手に渡り、偶然そこへ運ばれてきたのだった。
そのバッグを開けようとすると、突然、防犯用の大音響が響き渡る仕掛けになっていたのだが、その事で逆に、凄いものが入っていると察した法念は、あろう事かバッグをねこばばしてしまう。
一方、金庫から拝借した金で購入した楽器を使い、バンドの練習をはじめた邦雄たちは、偶然フーテン二人と知り合い、ちょっとしたいざこざの後、彼らも楽器演奏が巧い事を知ると意気投合するのだった。
やがて、1億円の入ったバッグをめぐって、それを奪い返そうとする、杉本、ジョージらと、運搬を依頼されながら裏切ったヤクザたち、さらに邦雄たち若者グループで三つ巴の争奪戦が始まる…。
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ザ・スパイダース主演のアイドル映画。
画面に登場する風俗表現や映像表現に、いかにも60年代のサイケな感覚を感じさせる映画となっている。
冒頭、白いセットの中に立つ、白いコートを着た女性がさっと片手をあげると、コートの裏地のカラーが現れて、それと同じ色のタイトルバックになるなどいう趣向もステイリッシュで洒落ている。
ドラマの進行とは別に、急に、セットでのコントみたいな映像が挿入されたりする。
キャスティングの見所としては、主演の堺マチャアキと実父の堺駿二が共演している所。
寺で二人がはじめて出会うシーンでは、情けないマチャアキの行動を見ていた駿二が「親の顔が見てみたいものだ」と嘆き、それを聞いたマチャアキ、駿二の方に顔を向け「ハ〜〜?」ととぼける楽屋落ちになっている。
本作の音楽も担当しているムッシュ・カマヤツことかまやつひろしと、現在、タモリなどが所属している芸能プロ田辺エージェンシー社長で、当時ドラム担当兼バンドリーダーだった田辺昭知の二人が、他のメンバーたちとは別行動しているのも、当時から二人だけ明らかに年齢が離れていたため。
メンバーの中には、現在、作曲家として高名な大野克夫(キーボード担当)等もいるため、音楽シーンのレベルは高い。
ただ、本作が映画として成功しているかとなると微妙な所。
口ひげに色付き眼鏡で、何やら「モスラ対ゴジラ」での悪役、虎畑を連想させるような佐原健二のドタバタ演技等見所もないではないが、全体的に親子関係の真面目なテーマに貫かれているせいか、スパイダースの持ち味であるコミカルな雰囲気があまり生かされていない。
スパイダース映画としては、まずまずの出来といった所ではないだろうか。
