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涙のあとに微笑みを

1969年、東京映画、池田一朗脚本、内川清一郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

高校生の山川健一(萩原健一)は、母、久子(新珠三千代)一人に育てられたせいか、ひ弱でいくじがない。

彼は、子供の頃、身体が小さかったのと、「しょうもない健一」という意味も含めて、みんなには「ショーケン」と呼ばれていた。

生活が苦しいので、母が勤めるスーパーの手伝いを、アルバイトとして毎日やっている彼の心を許せる友だちは、家で飼っている鳩たちだけ。

ある日、黄色い鳩のゴローの様子がおかしい事に気付いたショーケンは、何とか医者に見せようとするが、母は相手にしない。仕方なく、一晩中、ゴローを抱いて寝るショーケンだった。

翌日、ショーケンは、学校の文化祭の物まねコンテストに無理矢理出され、ピンキーの「恋の季節」を唄って優勝するが、それを面白く思わない番長の秋元に呼出され、いじめを受け、さらに大切に抱いていた鳩のゴローを奪われて、目の前で殺されてしまう。

鳩のゴローの墓を作ってやり、めそめそ泣いているショーケンの姿を傍らで見守っていたのは、スーパーに良く買い物に来る嫌味な金持ち、浅田夫人(横山道代)のお手伝い、美香(聖ミカ)だった。

やがて不思議な事に、ゴローの墓から紫色の鳩が飛び出すが、周囲にいる者たちは誰も気付かない。

それは、星空に浮かぶ椅子に腰掛けていた白ヒゲの神様(堺正章)が、魔法でよみがえらせたゴローの魂だったのだ。

神様は、そのゴローの魂を美香の胸に溶け込ませる。

その瞬間から、美香は、唇に人さし指を重ねると、何でも願いごとが叶う魔法の力を身に付ける事になる。

ショーケンは、この後、母親の再婚話とか、自分の出生の秘密を知る等、嫌な事が重なったため、家出をして、級友やバイト仲間たち(テンプターズの面々)と共にフーテンになるのだが、やがて、ちょっぴり成長したショーケンは、また我が家に戻り、学校でいじめられた番長と対決する事になる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

ショーケン(萩原健一)のスクリーンデビュー作であり、彼がボーカルを担当していた人気GS(グループサウンズ)ザ・テンプターズのヒット曲が色々登場するアイドル音楽映画。

ただし、特撮やアニメ技術を駆使した魔法ファンタジーの要素と、母子のお涙情愛ものという、二つの異なった要素が巧く噛み合っているとはいい難く、作品としては印象の薄いものになっている。

それでも、ショーケンが、アニメの世界で唄っていたり、将来の夢としてカーレーサーや飛行機のパイロットを夢見る空想シーン等は楽しい。

美香の魔法の表現としては、人にぶつかりそうになった自動車が、突然、写真アニメのように人の上を飛び越えたり、最後、不良グループと戦うショーケンが、後ろ45度くらいに傾いても倒れなかったり、空中に浮かんだり、相手のくり出すパンチが、ショーケンの身体を素通りして背中に突き出たりさせる。

今観ると、古めかしい表現だが、当時としては、あれこれテクニックを駆使している事がうかがえる。

歌を唄っているシーンの特撮で印象的なのは、ガラステーブルを前に座っているショーケンが、そのテーブルの上で演奏している小さなテンプターズを眺めているという合成部分。

何やら「ガリバー旅行記」や「スター・ウォーズ」でのホログラィー・チェスなどのシーンを連想させ、かなりシュール。

全体的なファンタジーイメージは、60年代に流行っていた「ウルトラQ」とか、九重佑三子版の「コメットさん」(1967)辺りに近い。

駅でスパゲッティ屋を開業している久子の姉役に山岡久乃、その分かれた元亭主に名古屋章、スーパーの支配人として大泉滉が登場している。

最初から最後まで、たえずメソメソしていて泣いてばかりいるという、いまでは考えられないようなアイドル時代のショーケンを観る事ができる貴重な作品ではある。