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無宿人別帳

1963年、松竹、松本清張原作、小国英雄脚本、井上和男監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

糞尿も垂れ流しのままという藤丸籠に乗せられた数十人の無宿人たちが、江戸から佐渡金山の水替人足にさせられるべく、街道を運ばれて行く。
途中無理な搬送で衰弱した川越無宿の長次郎(伴淳三郎)は、越後に着いたところで息を引取る。

佐渡に着いた無宿人たちは、役人(西村晃)から、小屋頭の八蔵(天王寺虎之助)、清兵衛(中村翫右衛門)、下世話係の新平(三國連太郎)ら役付きの古参の者たちを紹介される。

一方、新しい佐渡金山奉行として横内主膳(田村高廣)が、支配組頭黒塚喜助(二本柳寛)を伴い赴任してくる。
若い主膳は、過去の台帳から加賀屋庄衛門(小堀明男)と奉行所の癒着の構造を発見し、その不正を正そうと張り切るが、黒塚の方は、その主膳の青臭い行動を苦々しく思っていた。

無宿人たちを佐渡まで連れて来た役人、占部小太郎(長門裕之)は、神田無宿の弥十(佐田啓二)という男が、実は、黒塚の妻、くみ(岡田茉莉子)の又従兄弟、宗像弥十郎の変わり果てた姿であると知っており、それをくみに知らせて、何とか自分の出世の手がかりにしようとする。

そんな中、無宿人たちが過酷な労働をさせられていた坑道で落盤事故が起こる。

その時、足を怪我した若い仙太(津川雅彦)は、清兵衛の娘、みよ(岩本美代)に親切にされた事から、彼女を意識するようになって行く。

弥十と妻くみとの仲を察知し、嫉妬のあまり、もはや、作業続行等無理な坑道に、無理矢理、弥十ともども無宿人たちを追い立てる黒塚。

さらに、不正が暴かれるのを嫌った加賀屋は、横内主膳を失墜させようと、新平を呼出すと、無宿人たちを先導して島抜けをするよう持ちかけるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

いびきがうるさい無宿人市兵衛に渥美清、同じく物静かな無宿人卯助に宮口精二、占部小太郎が囲っている女に左幸子など、多彩な出演者たちが揃っており、陰謀、欲望が渦巻く複雑な人間模様が描かれて行くのだが、如何せん、個々の人物像が今一つ生きていない感じで、全体的に散漫な感じが残る。
さらに、後半の大半がナイトシーンとなっているため、画面上見難いのも気になる。

よほど上映条件の良い劇場で観ないと、この不満感は解消しないのではないか。

三國連太郎は、相変わらず、アクの強い芝居をしている。

マゲ姿が珍しい佐田啓二は、場面によっては、驚くほど息子の中井貴一に似ているので驚かされる。

野心溢れる小役人として、かなり重要な役所となる占部役を演じる長門裕之は、まだちょっと若すぎて、演技がわざとらしく見えないでもない。

弟の津川雅彦の方も、この当時はお世辞にも巧いとはいえないのだが、まだ、演技力をさほど要しない二枚目役という事で、得をしている。

結構、大作として作られているようなのだが、娯楽映画として成功しているとはいい難い。

特定の主人公の視点に頼らない群集劇という事なのだろうが、それにしても、佐田啓二演ずる弥十の印象が弱いのが致命的。

三國連太郎や宮口精二等、強烈な個性の役者たちに食われてしまっているようだ。

前半部の、荒涼とした坑道付近の屋外セットや、抗道内の過酷な重労働の描写等には見所もないではないのだが。