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蜘蛛の絲

1946年、三幸映画、芥川竜之介原作、大藤信郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

ある日、天上界の蓮池の近くをお通りになったお釈迦様は、水の下に透けて見える地獄の様子を御覧になりました。

そこで苦しんでいる亡者の中にカンダタという男の姿を発見なさったのです。

この男は、生きている間中、悪事の限りを尽くした極悪人でしたが、唯一度だけ、蜘蛛を踏み殺さずに助けてやった事がございました。

その事を思い出されたお釈迦様は、蓮に付いていた天上界の蜘蛛の糸を一本、下の地獄に降ろしてやったのでございます。

地獄で悶え苦しんでいたカンダタは、上から降りて来たその糸に気付くと、掴んでよじ登りはじめたのです。

途中まで登って来たカンダタが、ふと下を見ると、何とそこには、大勢の亡者たちが、我も我もと、自分が捕まっている糸によじ登って来るではないですか。もはや、何時、細い糸が切れるかわかりません・・・。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

説明するまでもない芥川の名作のアニメ化作品。

孤高のアートアニメの先駆者だった大藤は、この原作をほぼ忠実にモノクロ画調も美しいセロファンアニメで再現している。

人間の根本的な浅ましさ、醜さを暴くというテーマ性は、この後、代表作となる「KUJIRAくじら」(1952)や「YUUREISEN幽霊船」(1956)でも、くり返される事になる。

画面が、重なりあう半透明のセロファンで、幻想的なほどに美しいものになればなるほど、その中に描かれている人間の心の貧しさ、醜さを浮き彫りにして行く。

シルエット表現になっている亡者たちの姿は、確かなデッサン力で描かれている。

独創的かつ高度な技術と、瑞々しい感性の融合。

世界に誇れる日本のアニメ表現の水準の高さは、この時代から存在していたのである。

正に天才の仕事と称したいほどの完成度の高さには、ため息が出るばかり。

アニメに関心のある方必見の歴史的名作。