1952年、千代紙映画社、大藤信郎監督作品。
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遠い昔、海に浮かぶ一隻の帆船。
その上では踊る芸者を囲んで、金持ちたちが浮かれ騒いでいた。
そこへ突然の嵐、船はたちまち遭難してしまう。
船に残ったのは、荒くれ男が三人だけ。
彼らは、板にすがって漂流していた先ほどの踊子を発見、船に助けあげると、欲望のままに、彼女に襲いかかるのだった。
そこへ突然現れたのは、巨大な鯨。
たちまち、人間どもを女も含めて飲み込んでしまう。
やがて、背中から潮と共に外へ吹き出された男たちであったが、海に落ちた所を又鯨に襲われる。
助かりたい一心で、鯨の尻尾にしがみつくものもあったが、やがては振払われ、全員海の藻くず。
それから、どのくらい時が経ったのだろうか?
半月が夜空にかかる北の海、一匹の鯨が悠然と泳いでいた。
そして、その傍らには、一匹の美しい人魚が添うように泳いでいる。
その人魚こそ、あの踊子の変身した姿であったのだろうか・・・。
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アニメの功労者に与えられる「大藤賞」にその名を残すアートアニメの先駆者大藤信郎の代表作の一本。
カラーセロファンを使った独自の手法を用い、人間の浅ましさを簡潔なストーリーにまとめあげている。
正に、孤高の幻想世界といった感じ。
この作品は、もともと1927年に作っていた自作を、戦後、大藤自らがリメイクし直した作品らしい。
カンヌ国際映画祭で上映され、観客として観ていたピカソやコクトーに賞賛されたという逸話まで残っている。
良く考えてみると、セロファンというのは、切って形を作るのは優しい素材だが、熱で変型したり、ちょっとした風や接触でも動いてしまう扱いにくさもあるものだと思う。
そういう素材を使って、あれだけの映像を作るという事は、しろうとにははかり知れない根気と苦労があったはずだ。
アニメファンだけでなく、一般の映画ファンにも一度は観てもらいたい歴史的名作である。
