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スーダラ節 わかっちゃいるけどやめられねえ

1962年、青島幸男原作、高橋二三脚色、弓削太郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

田畑を売ってしまい貧困に喘ぐ農家出身の石橋信一(川口浩)と、同じく貧しい水上生活出身の夢田春夫(川崎敬三)の二人は、同じ大学の出身で、各々家族たちの大いなる期待に後押しされて、東京の日の丸商事に入社する事になる。

貧しい石橋は背広すらも買えず、学生服のまま出社する始末。住まいは夢田のアパートに同居させてもらう事になる。

新入社員は男の子ばかりだというので、古参の女性社員たちが注目する中、渉外科に配属された新入社員の内、石橋、夢田を含む7人が、後日、上司である中村課長(ハナ肇)から呼び出される。

何でも、社長が娘も伴ってアメリカに海外視察に出かけるに当たり、二人の随行員を新入社員から選出したい。

ついては、これからしばらく、7人の勤務態度、女性関係の潔癖さ、英語力等、多方面で評価して決めたいので心して欲しいというのである。

その話の最中、いきなり、女性関係等きれいなものと豪語していた夢田に女性の客が訪れてくる。
同じ水上生活者だった弓ちゃん(渋沢詩子)が、近所の食堂に勤める事になったと報告に来たのだった。

課長の評価を気にする夢田は、彼女との関係を勘違いされぬかとおろおろ。

一方、石橋の方も、同僚の荒牧(藤原礼子)という女性社員が身に付けているロケットに、自分の写真が入れてあると聞かされ大慌て。全く、身に覚えがなかったからである。

その写真は、実は、荒巻の死んだ亭主の姿であり、石橋と瓜二つだった事による勘違いだった事が後に判明するのだが、彼女の家を訪れた自分の事を、本当の父親が帰ってきたと喜ぶ遺児の秋子ちゃんを見た石橋は、複雑な心情になるのだった。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

タイトルは、クレージーキャッツの植木等が唄ったヒット曲名だし、冒頭に、植木等自身が登場し、米ソの核実験のフイルムなどを写しながら、大袈裟にこれから始まる物語の解説を始めるので、一見クレージー映画のような印象だが、実は、クレージーはゲスト的な登場の仕方しかしない。

本作は、あくまでも、川口浩と川崎敬三主演の出世競争を皮肉ったサラリーマン新入社員物語なのである。

クレージー人気に便乗したコメディタッチの風刺ドラマといった所か。

ストーリーの基本は、7人の新入社員たちが、随行員に選ばれるため、互いに牽制しあったり、抜け駆けをしようとする様を、競馬になぞらえて描いている。

誰しも、理想とする生き方への夢は持っているが現実はままならない、「わかっちゃいるけど、やめられない…」というオチに繋がって行く。

上映時間も短く、内容もコメディなのか人情ドラマなのか色合いがはっきりせず、中途半端な印象だし、登場人物もほとんど顔なじみの薄い人たちばかりなので、かなり低予算で作られた添え物映画のような感じ。

調べてみたら、どうも、同じく橋幸夫の主演歌謡映画「江梨子」の併映作品だったらしい。

見所といえば、生真面目そうな川口浩の演技と、ひょうきんな三枚目的演技を見せる川崎敬三の姿が珍しいくらいか。

大辻伺郎や世志凡太、スマイリー小原などの姿が懐かしい。