1946年、日本漫画映画社、政岡憲三脚本+撮影+演出作品。
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春の川べり、擬人化した蝶が二頭、空を飛ぶ。
男の子と女の子の二頭。
川には、舟が漕ぎ出し、着物姿の少女が微笑む。
その内、小さな男の子の手から、風船が一つ離れて空に飛び上がる。
二頭の蝶は、その風船を追い掛け、やがて、風船の上に腰掛け、風船旅行と洒落こむ。
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全編、ウェーバーの音楽に合わせて繰り広げられる優雅なアートアニメ。
日本版ファンタジアとでもいった趣の作品になっている。
やはり、ディズニーの「ファンタジア」(1940)を意識して作られたのだろうか?
動きは滑らかだし、描かれている世界は、特に子供を意識したようなマンガチックなものではない。
かといって、実験アニメ特有の難解さもなく、美しく日本的な春の情景が幻想的かつリアリスティックに描かれて行く。
何でも、興行を予定していた東宝から、その高尚さゆえに、公開を断わられたという曰く付きの作品らしい。
確かに、当時のマンガ映画という概念からははみ出た、かなり意欲作だったと思える。
今でいう「アートアニメ」の範疇に入るもので、一般受けするような感じの作品ではないが、アニメファンなら一度は観て欲しい作品。
物資に乏しかったと思える終戦直後、理想に燃えて、新しいアニメの可能性に挑戦した政岡憲三の夢そのものを見るような、貴重な作品となっている。
短編ながら、その技術的な確かさ、イメージの豊穣さ、全体的なレベルの高さには、驚かされる。
