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1986年、日本テレビ放送網+バップ+ATG、佐藤春夫原作、山田信夫脚本、大林宣彦監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

雄城第一尋常小学校に通う医者の息子、須藤総太郎(林泰文)は、ある朝、双眼鏡で覗いた職員室に、「女の人というには子供っぽく、女の子というには大きすぎる」見知らぬ若い女性の姿を見つける。

彼女は、第二尋常小学校で問題児扱いされて転校してきた大杉栄(片桐順一郎)という少年の付き添いらしかった。

大杉は、総太郎たちよりも2つ年上という事もあり、身体も大きければ気性も乱暴で、たちまち、クラスのガキ大将であった床屋の息子、ボンちゃんと対立する事に。

総太郎は後日、あの朝見た少女お昌(しょう)ちゃん(鷲尾いさ子)が、大杉の腹違いの姉であった事を、彼女自身の口から聞かされる。
大杉は、希望だった兵学校に、自分がお里(根岸季衣)という妾の子供である事が理由で入れない事を知り、ぐれてしまったのだが、どうすればよいかと相談を持ちかけられたのである。

ほのかに、お昌ちゃんに憧れを抱く総太郎は、張り切って、ルールを決めての「わんぱく戦争」を立案、クラス中の男の子たちを巻き込んで実行する事に。

大杉も又、義理の姉であるお昌ちゃんに恋心を抱いている事を知っている総太郎は、ライバル心を燃やしたのである。

しかし、そんな彼ら少年たちの気持ちとは裏腹に、お昌ちゃんには筏乗りの早見勇太(尾美としのり)という恋人がすでにおり、兵隊に召集される赤紙が来た早見と、父親(峰岸徹)が作った借金のために、四国の女郎屋に売られる事になったお昌ちゃんは、ある決心を固めていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

戦争に向う暗い時代を背景にした、一人の少年の追憶を、かなり誇張した戯画的表現を交えて描いた作品。

前半の「わんぱく戦争」の部分は、鈴木清順監督の「けんかえれじい」(1966)の少年版といった趣。

それに、少年期特有の甘酸っぱい初恋の顛末が重なって行く。

お昌ちゃんと早見に関しての描写は、シリアスかつ幻想的である。

クラスの担任である川北先生に武内力、総太郎の父親に三浦友和、その友人で、お昌ちゃんに思いを寄せる青木中尉に佐藤浩市、その部下の田端軍曹にガッツ石松、総太郎の母親に入江若葉、お昌ちゃんを買う女衒の親分に佐藤允、小学校の合図用太鼓を叩く小使いさんに大泉滉、校長に宍戸錠、他にも、小林稔侍、坊屋三郎、浦辺粂子、泉谷しげるなど、多彩な出演者が登場する。

本作には、白黒版とカラー版があり、筆者が観たのは白黒版。

全体的にかなり様式的な作り方で、前半はまだ面白く観れるが、監督の作品への思い込みの強さの現れなのだろうが、後半はやや長過ぎて飽きてくる感じもする。

ふりちん姿で頑張っている少年たちが可愛くも愉快。
恥ずかしさに耐えて、良く頑張ったと誉めてあげたい。

この作品がデビュー作である鷲尾いさ子は、セリフ回し等こそ、さすがにまだ拙いが、八頭身のスタイルを惜し気もなく披露しており、こちらも、その度胸に感心させられる。

主役の少年、総太郎を演じている林泰文君は、やがて、同じ大林宣彦監督作品「青春デンデケデケデケ」(1992)の主役ちっくんとなる。