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くもとちゅうりっぷ

1943年、松竹動画研究所、横山美智子原作、政岡憲三脚本+演出作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

♪てんてん、てんとう虫〜♪と、愛らしく唄いながら、一匹の女の子てんとう虫がお花畑の中で遊んでいる。

一方、同じ、花畑の中で、黒い蜘蛛のおじさんも、網を張って唄っている。

夕暮れ近く、蜘蛛のおじさんは、手製のハンモックを見せながら、てんとう虫に誘いをかける。

子供らしい好奇心から、ちょっとハンモックに興味をひかれるものの、てんとう虫は、もう暗くなるからと誘いを断わる。

蜘蛛のおじさんは、執拗にてんとう虫を追ってくる。

その危機を救ってくれたのが、チューリップのおばさん。

てんとう虫を花びらの中に入れて閉じてしまう。

怒った蜘蛛のおじさんは、そのチューリップを、蜘蛛の糸でがんじがらめにふさいでしまうのだった。

やがて、一天にわかに書き曇り、大粒の雨が降り出す…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

おそらく、日本における最初の本格的なアニメ評論本であると思われる、森卓也著「アニメーション入門」という本で、この作品を知って以来、個人的には何十年ぶりかでようやく出会えた歴史的名作アニメ。

噂に違わぬ素晴らしい作品だと思った。

何より、てんとう虫の女の子が愛らしい。

額の上にある触覚のような部分がキラキラ輝いて見えるのは、ひょっとすると透過光を使用しているのか?

一方、蜘蛛のおじさんの顔は、昔のアフリカ系の人の誇張的表現をそのまま使っている。

これが、今観ると、モダンな表現に感じる。

動きも滑らかなら、雨粒が蜘蛛の巣に付着している様等、奥行きのある自然表現も見事。

これが、何と、戦争中に作られたというから驚く。

メルヘン溢れる内容に軍事色等全くなく、当時としては、この事が軍部の怒りを招いたという。

短い作品ながら、機会があれば、子供から大人まで、幅広い層の方々にぜひとも観てもらいたい、心洗われる名品だと思う。