TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

いかレスラー

劇中、ジャンルとして人気低迷気味のプロレス界を憂えていた、超日本プロレスの社長役のルー大柴や、正日本プロレスの社長役、中田博久は、突然出現したゲテモノ、いかレスラーに、戦後の国民的プロレスヒーローだった剛道山のイメージを重ねては、業界の人気挽回を夢見る。

一方は、プロレスを観客が潜在的に望む方向に意図的に演出する、ショーとしての方法論、一方は、真剣勝負すれば観客は付いて来るという実力本意主義的な方法論。

今は別々の立場である二人の社長も、かつては、同じ剛道山に憧れた人間なのだろう。

ただ、そこから受け取る方法論の解釈に違いがあるだけだ。

本作では、一見、キャプテンウルトラ(中田博久)の意見の方が正しいんだという風に取れなくもないような展開になっているが、私はルーの方の意見も決して間違っていないと思う。

戦後の国民的ヒーローとして、高度成長期の日本を引っ張っていた剛道山が、今生きていたとしたら、一体何をプロレス界に望むのか…。

こ難しい事を並べ立ててきたが、これはあくまでも個人的な妄想の類い。

この作品は、基本的にナンセンスギャグ映画なので、別に結論めいた表現が出てくる訳でもないし、第一、最初から理屈で見るようなものでもないだろう。

あくまでも、おバカ映画として笑って観ていれば良いのである。

ただ、最後に出現した人物を見る時、剛道山のモデルである力道山のイメージをそこに発見するだけでなく、もう一人の戦後最大級の空想ヒーローの姿(首筋から背中にかけてのライン等、往年そのまま!)をも発見すると、今や、プロレス同様低迷している「着ぐるみ特撮ジャンル」への警鐘も感じられるのだ。

さすが、河崎監督と監修の実相寺昭雄さん。

ワイヤーなし!!!CGなし!!!スタントなし!!!着ぐるみの魅力だけで勝負した潔さは買いたい。

特に、シャコボクサーのカッコヨサは秀逸。
基本的に甲殻類モンスターはかっこいいのだ。

個人的な好みをいえば、いかレスラーの対戦相手には亀レスラーを持ってきて欲しかった。

「ガメラ対宇宙怪獣バイラス」(1968)や「決戦!南海の大怪獣/ゲゾラ・ガニメ・カメーバ」(1970)の例を引用するまでもなく、「いか」といえば「亀」なのである(ちょっと強引)。

バッタでも良かったんだけど…(仮面ライダー対死神博士=イカデビル)

さらに、いかレスラーやたこレスラーのエフェクトをかけたセリフが聞き取り難かったのがちょっと残念。

いかレスラーがパキスタンの山の中出身と聞いて不審がる新聞記者に、「日本でも、山の中にたこが出現した例があります」と答えているいかレスラーは、かなり特撮オタクと見た。(その意味する所が瞬時に分かった人も同類)

この辺のヒーローの出身地のヒントになっているのは「レインボーマン」か?

オタクにとっても、一般の(洒落の分かる)方にも十分楽しめる作品になっていると思う。