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愛のお荷物

1955年、日活、柳沢類寿脚本、川島雄三脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

乱れる性道徳、出生率が増す一方の世相を受け、国会では、売薬業出身の厚生大臣、新木錠三郎(山村聡)が、受胎調節に関する相談室を全国に作ろうとする法案を説明していた。

追求する野党の神岡夏子議員(菅井きん)は、大臣自らががもう性衝動を持てなくなったので、そんな案を出すのだろうと個人攻撃する始末。

その頃、新木大臣の妻、蘭子(轟夕起子)は、産婦人医から妊娠の診断を受けて驚いていた。
何故ならば、すでに彼女は48歳。
娘二人に息子の三人各々、すでに立派な大人になっており、その後20年間が過ぎていたからである。

同じ頃、蘭子の長男、錠太郎(三橋達也)は、付き合っていた父、錠三郎の秘書、五代冴子(北原三枝)から、妊娠した事を打ち明けられ、こちらも狼狽していた。
坊ちゃん育ちのせいか、いまだに趣味でテレビやラジオをいじったり、本牧亭という寄席で、素人芸の長唄を客に披露したりする毎日で、一人前の社会人としての自覚が全くなかったからである。

一方、医者荒巻(田島義文)の家に嫁いですでに6年になる長女の和子(東恵美子)は、いまだに子宝に恵まれていなかった。

さらに、次女のさくら(高友子)は、京都在住の良家の出身ながら、ドラムなどを叩いていまだにふらふらしている出羽小路亀之助(フランキー堺)という男と何となく付き合っていた。

その日、議院会館を訪ねてきた息子の錠太郎から、冴子の妊娠の事を打ち明けられ、我が家に帰ってきた錠三郎は、妻からも妊娠の事を打ち明けられ、大いに戸惑う事に。
赤線、青線の類いを嫌悪し、人口を調整しようとする自分自身の妻が妊娠したとあっては世間体が悪いからであった。

そんな錠三郎は、京都に出かけた折、京大の学生だった時代に付き合っていた元舞妓の貝田そめ(山田五十鈴)と28年振りに再会し、彼女から、自分達の子供が育っていた事実を打ち明けられる 。

その頃、自分との結婚に煮え切らない態度の錠太郎や、蘭子ら新木家の態度に業を煮やした冴子は、自分なりに知恵を授けて、錠太郎に家を飛び出すようしむけるのだった。

さらにさくらも、冴子の計略に感化され、箱根に若い愛人と同居している元気な82才の祖父錠造(東野英次郎)と結託して、何やら、両親を篭絡しようとし始めていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

少子化が深刻化する現在とは、全く逆の状況だった頃の風刺コメディ。
結婚や妊娠に右往左往する男女の様子が、軽妙洒脱に語られており、全体的に明るく楽しい作品になっている。
この当時の日本の人口は9000万人にも満たなく、売春防止法はまだ成立前だった。

とにかく、出演者が多彩で、冴子と一緒に錠三郎を支える男性秘書鳥井に小沢昭一、産婦人科医の山内に三島雅夫、代議士仲間に小川虎之助や芦田伸介、新木家と店を手伝っている山口に殿山泰司、同じくお手伝いの照に小田切みき、冴子とは古い付き合いで、成行き上、錠太郎を自分のテレビ会社に就職させる事になる坂口という老人に小沢栄、さらにナレーションは加藤武。

三橋達也など、新木錠太郎を含め、本作では3役にも挑戦している。

それにしても、「ゴジラ」(1954)に続き女性議員を演じている菅井きんや殿山泰司の、何時観ても変わらない風貌には驚かされる。

冒頭、蝦蟇蛙が映し出されるが、これは、妊娠の判定に、当時は、蝦蟇蛙が利用されていた事を象徴したもの。

出番はさほど多くないものの、フランキー堺は得意のドラムを叩くシーンがある。

テレビやポラロイドカメラなど、当時としては最新鋭のメカや、水爆とか、放射能雨などいう時事ネタが登場する一方、佃島などの下町情緒も描かれており、監督の趣味性を感じる。