TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

スリーピー・ホロウ

作品を観終った後、何時までも心に残っていたのは、ヒロインを演じたクリスティーナ・リッチの存在であった。この作品の成功は、彼女の何とも形容し難いキャラクターがなければ、成立しなかったのではないか、とさえ思えてしまう。
古い因習に縛られた集落の中で孤立する、若き探偵役を世話する美少女という、ありがちな役どころなのだが、最後までその内面が窺い知れず、物語の設定から、ミステリファンなら事前に想像してしまう、ある種の予測も、一瞬忘れさせてしまうくらい、不可思議な緊張感が終盤まで持続する。
ディクスン・カーや横溝正史ばりのオカルティックな謎解きとしても楽しめる一方、当然、バートン得意のマニアックなダークヒーロー物としても、観客は期待を裏切られることはない。
古典的な怪奇映画へのオマージュを意図して、全編、凝りの凝った美術シーンが楽しめるものの、恐怖物としては、昨今のVFX映画の例に漏れず、観客に想像する暇も与えないほどの、余りにも自然なショッキングシーンの仕上がりぶりには、もはや、大人を震え上がらせる力は薄れたというべきかも知れない。
監督もその辺は承知で作っているようで、アニメ出身作家らしいイリュージョン玩具から、「鉄の処女」などの拷問器具に至るまで、こだわりの小道具類の効果的な表現を随所に交えながら、とにかく全編、首なし騎士(ホースマン)を、恐怖の亡霊として描くよりも、身体的ハンデを物ともしない座頭市のような、ひたすら強い検死として、ただただ、カッコ良く撮ることだけに神経を使っている姿勢が、痛いほど伝わってくる。
首がないのに、なぜか頭脳プレーを連発する、ギャグすれすれの首なし状態の時も、頭蓋骨を取り戻し、「黄金バット」状態になった時も、クリストファー・ウォーケン演じる生前の姿に変身した時も、すべてが見とれてしまうほどクールに描かれており、改めてこの監督の、モンスターに対する人並みはずれた偏愛ぶりが忍ばれて、同好の士としては心底うれしくなった。
怪奇ファンならずとも、ギャグ、幻想、ミステリなど、様々な娯楽要素を満載したバートン一流のこの作品は、各人に違った魅力を提供してくれることだろう。