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ロッキー3

この3作目で、このシリーズの性格はがらりと変わったように感じる。
元々、貧しくボクサーとしても年齢的に峠を越えていた主人公ロッキーが、ハングリー精神だけで、無謀とも思える挑戦に勝ち抜く…と言う素朴なサクセスストーリーだったはずなのだが、ここまでシリーズが続くと、劇中でも、彼はすでに押しも押されもしない成功者であり、ハングリーであるわけがない。
そこでこの作品では、彼をスーパーマンのように強いスター選手としてまず描き、途中で引退を考えさせる事で、「迷いのあるスーパーマン」としての図式に物語の構造を微妙に変えてしまったのだ。
そうして、彼の前にかつての自分の分身とも言うべき、ハングリー精神の塊のようなライバルを出現させる…。
ここで、前半でのスーパーマンとしての描写が生きてきて、ライバルを「倒すべき悪い相手」のように、観客に錯覚させる訳だ。
後半は、すでにパターン化した、ロッキーの再トレーニング場面を挿入する事で、ロッキーは「迷いを断ち切り、よみがえったスーパーマン」と化す。
これで観客の感情は、全員迷いなくロッキーの方に付き、最後のカタストロフを今までと同じような感覚で味わう事になるのだ。
1.2作目の内容に感動した観客なら、普通、ライバルの方に感情移入するはずなのだが、そこをうまく脚本上のトリックで、観客の心理を反転させてしまった手腕は見事と言うしかない。
この後のシリーズが、「スーパーマン対悪い敵」と言う勧善懲悪の図式になっていった事は言うまでもない。