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クレヨンしんちゃん
嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲

2001年、原恵一脚本+監督作品。

このシリーズは、基本的に、下ネタ満載の子供のハチャメチャさとバイタリティーを楽しむ所がベースになっているが、近年、そこに製作者達の「ノスタルジー要素」をさりげなく(遊び感覚で?)盛り込む事で、日常生活からかけ離れた「シュール」な味わいが加わり、独特のファンタジー空間を作り出す事に成功しているように思える。
特に本作では、そのものズバリ「懐かし素材」を前面に押し出し、どちらかと言えば、中年世代の親の方に視点が向いている作りになっている。
もちろん、いつものハチャメチャギャグも満載なので、幼児たちにとっても笑い転げる娯楽アニメである事に変わりはない。
冒頭いきなり、太陽の塔から始まり、1970年の大坂万博の様子が画面狭しと描かれる。
ソ連館、アメリカ館、オーストラリア館、ガス館、松下館、日本政府館、三井館…、筆者など、パビリオンの形を見ただけで、いくらでも名称が出てくるくらいだ。
さらには、巨大ヒーローと怪獣、魔女っ子もの、トヨタ2000GT、スバル360、ベッツィ&クリス、小川ローザ「オ〜!モーレツ!」、カルメンマキ「時には母のない子のように」、ケンとメリー、ザ・ピーナッツが歌う「モスラ」挿入歌、吉田拓郎、プロセス中継に欠かせなかった三菱掃除機「風神」、往年の流行ギャグetc…。
ある世代の人間にとっては、これでもか…と言うくらい、懐かしアイテムのテンコ盛り。
「大人=懐古」「子供=未来」という対比自体は、一見凡庸な発想に思えるが、ラフな描画や動きのめまぐるしさにつられ、ついつい観入って行く内に、最期は観客に感情移入させてしまう技量は大した物だと思う。
特に、中盤の猫バスチェイスシーンや、後半の東京タワー風の建造物での追っ掛けなどは、ルーティンアクションながら、それなりに面白く演出されていて、感心する事しきりであった。
10〜20代くらいの観客層には、今一つピンと来ない部分もあるかと思うが、幼児と中年世代にとっては、紛れもない傑作アニメになっていると感じた。
ラストでしんのすけが、敵役に対し、マジなセリフを決めるのが、妙におかしい。
スタッフたちの悪ノリが高じて、ドタバタギャグアニメを、逆に「心に染みる名作」に変化させてしまった、貴重な珍品とも言えよう。