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長靴をはいた猫

1969年、東映動画作品。
原画に宮崎駿が参加している。
ねずみを殺生しない事がとがめられ、猫の仲間から追われる事になった主役のペロが、雨宿りで立ち寄った家で、兄弟から疎んじられている少年ピエールと出会う…。
話の基本は、お馴染みのペローの童話だが、脚本の井上ひさし、ギャグ構成の中原弓彦(小林信彦)など、異色の才能が結集し、前年発表した「太陽の王子 ホルスの代冒険」同様、脂の乗り切ったスタッフ達の力量と相俟って、稀に見る傑作アニメになっている。
「ホルス」が、その内容の素晴らしさにもかかわらず、やや対象年齢が高かったため、興行的にふるわなかった事への反省からか、この作品では、徹底した動きを中心とした可愛らしさと笑いで満たされた良質の子供向け娯楽作品を目指して作られた姿勢がうかがわれる。
その製作意図は見事に成功しており、従来の東映動画が「ややPTA的作り方」で、子供からすると「退屈」な面もあったのに対し、この作品では、子供から大人まで楽しめる「真の娯楽作」になっているのが嬉しい。
ペロの声を担当した石川進(初代「オバQ」の歌でお馴染み)、魔王ルシファの小池朝雄(刑事コロンボ!)、猫の刺客役のキンキン(愛川欽也)、水森亜土ちゃんらが懐かしくも、画面を生き生きとさせてくれている。(亜土ちゃん、サイコ−!)
特に、宮崎駿の意見が多く取り入れられていると言われる、ラストの城でのアクションは、計算され尽くした面白さに溢れており、見事と言うしかない。
魔王ルシファが、崩れかけた城壁を「八艘飛び」のようにジャンプする様は、後年の「カリオストロの城」のルパンのアクションに、そのまま流用されているのでは…と思わせたりもする。
とにかく、小さな子供から大人まで、絶対楽しめる事請け合い。
東映動画が世界に誇れる傑作の一本である事は間違いないだろう。