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ゴジラ モスラ キングギドラ 大怪獣総攻撃

誰もが気付いている事だが、過去何十本も作られてきた「ゴジラ」に、初期のようなインパクトや奇想を望むのは酷というものであろう。
 それでも、シリーズ最新作である本作では、そうした硬直感を逆手に取り、マンネリ化した人気怪獣たちを臆面もなく再結集させ、一種の「力技」で「怪獣プロレス」全盛の頃の熱気を蘇らせよう…としているように思える。
 そこは、怪獣映画の醍醐味もツボも、十二分に心得た金子監督だけに、理屈抜きの迫力に満ちた、ファンが酔いしれるような上々の仕上がりになっている。
 「キングコング対ゴジラ」以来、子供客への配慮の為か、意識的に避けられてきたような感のある「ゴジラの直積的人間襲撃」描写も、今回はきちんと描かれているし、東宝特撮ものらしい「パノラマ感」に溢れる映像は嬉しい…というしかない。
 しかし、それは同時に、絶対的恐怖の対象、圧倒的に強かった時代のゴジラに対する郷愁とも、ハリウッド版も含めた、過去の名場面へのオマージュシーンの数々に込められた、監督一流のシリーズ全体への「鎮魂歌」とも見えなくもない。
 物語自体は、「G3」の路線を継承するかのように、古代伝承や超自然現象などをベースにまとめられており、かなり意図的な「初代ゴジラ」への、こだわりを臭わせるものになっているのだが、正直、そうした、監督独特の思い込みには、共感しにくいものがあるし、説得力にも欠ける…と思える。
 むしろ、「平成ガメラ」でお馴染みとなった面々が多数出演している事により、怪獣世代の夢であった「ゴジラ+ガメラ」の世界観の融合を味わう事ができるのが、本作の見所であろう。
 そして、何よりも、近年のゴジラ映画と本作が決定的に異なるのは、荒唐無稽な「大嘘」を、画面上で、それなりに白けさせずに楽しませてくれるだけの「特殊技術」と演出が、きっちりバックアップし得た点である。
 CG技術などは、予算の関係もあって、まだハリウッド並み…とはいかないため、画面全体を暗目に落として、質感表現をごまかしていたりする部分はあるが、基本的に、従来のような「ちゃちさ」はほとんど解消出来た…といって良いのではないだろうか。
 特に、モスラの表現など、やや小振り感は否めないものの、捜演とCGを巧みに組み合わせた柔軟な表現は、シリーズ最高の出来に思える。
 風景や人間たちとの合成も自然で、技術の格段の進歩に感心してしまう程だ。
 これまで、長らく、日本特撮の中核として認識されてきた東宝特撮だが、あえて、外部の特撮スタッフを招き入れる事で、いつの間にか様式化、陳腐化していた、自らの伝統芸とは、全く別のアプローチが見事に育っていた事を、あえて世間に示したといえよう。
 今後は、ここまで可能になった新しい表現技術で、過去の財産とはまた別の、全く新しい「特撮映画」を生み出す事によって、新たなムーブメントを巻き起こさん事を願って止まない。