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ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦

ともすれば大作「G3」や、乱立する春の幼児映画群の中に埋没しがちな印象であった「ウルトラマンティガ・ウルトラマンダイナ&ウルトラマンガイア 超時空の大決戦」だったが、観ている途中から、これは大変な傑作なのではないかとの思いにかられ始めた。娯楽作品としての完成度は好評だった前作をはるかに凌いでおり、3大ヒーローに共演を成立させるための辻褄合わせだけに終っていない、巧妙勝つ創意に富んだ脚本と演出は、この作品を劇場版ウルトラマンとしてだけではなく、子供映画としても、歴代怪獣映画と比しても、かなりの上位に位置する出色の出来に仕上げ得たと感じた。
ギャンゴやガバドンの発想に触発されたらしき着想に一見新味ははないのだが、その素朴で普遍的なテーマ「子供が持つ夢への憧れ」と、子供の活動範囲「学校を中心としたほとんど一町内区域」と言う、極端に限定された世界観に話を絞り込んだ事で、「学校の怪談」や「ウルトラQ」的センス・オブ・ワンダーを獲得し得た点を高く評価したい。
この事により、小学生以上の観客なら誰もが思い当たる「自分の原風景」に物語がオーバーラップし、「パラレルワールド」と言う難解な疑念を苦にする事もなく登場する子供達と同じ目線と感情を共有しながら、彼等の日常に出現する数々の怪現象に素直に驚きの声をあげる事ができるのだと思う。
この辺の「夢と現実の交差」を押さえた演出の旨さは、あの「ネバーエンディングストーリー」にさえ勝っているのではないだろうか。
スクリーンに登場するお馴染みのメカ類なども重量感と迫力があり、つくづく「特撮物」は、劇場でこそ力を発揮するジャンルなのだという思いを改めて認識させられた。クライマックスの学校倒壊シーンなど、ある意味、「G3」における渋谷壊滅シーンにも匹敵する迫力で、「劇場版パワーレンジャー」や「ビーストウォーズ」を彷佛とさせる、CGメカ「アドベンチャー」の小気味良い活躍や、3大ヒーローうち揃っての畳み掛けるようなラストアクション共々、スーパーヒーロー物の醍醐味を心底堪能できたように感じる。
松竹の現状を考えれば、これだけの快作を擁しながら、その内容を真に共感でき得る「小学生以上の観客(母親層は除いて)」を、全く劇場に呼び込む事ができない営業の弱さを責めるのは酷かも知れないが、幼児達が「ガイアはまだ?」と、あちこちで声を上げている中、今回も改善されるどころか、ほとんど「幼児虐め」と化した観のある、意味不明のアニメ併映は糾弾されても仕方ないのではないか。
「怪獣映画の終焉」が囁かれる今、このウルトラマンシリーズのみならず、TVなどで成長著しい若き才能者達の今後の発展が正直気になる。映画業界に関しては暗澹たる予感しかないが、実写ファンタジーを愛し、「夢見る力」を持ち続けている人材がいる限り、「この世界は滅びはしない!」と信じたい。