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AVALON/アヴァロン

一種の「リドル・スト−リ−(謎物語)である。
 観念的な世界を、言葉で説明する事自体、あまり、意味のない行為であると思えるが…。
 セピア調の色合いに、デジタル加工されたヨーロッパの風景と、アンニュイなドラマ運びは、どこかで観た事のある、懐かしい映画を連想させるが、時々、稲妻のきらめきの様に、最新のデジタル処理の効果が挟み込まれ、これが、21世紀の実験的な作品であることを思い出させてくれる。
 現実とバーチャルなゲーム世界を、行き来する一人の孤独な女…。彼女の意識を象徴するかのように、現実の映像は、ゲームの世界のそれより、あいまいに滲んで見える。
 その演出に気付けば、彼女が執拗に探し求める、もうひとつ上の「レベルSA」ゲームがどういう世界であるかを推測するのは、そう難しい事ではないだろう。彼女が、追い求めている世界は、はたして、虚構の中にあるのか、それとも…。
「虚構と現実の錯綜」というテーマや、クールなヒロイン像、戦車などを使った戦闘シーンなどは、これまでの押井作品をそれなりに観続けてきた人には、それほど、野心的とも、革新的とも、感じられないのではないか。
 それでも、荘厳で美しい音楽の調べや、イメ−ジを喚起させる映像の数々は、十分に魅力的で、豊かな大河の流れに身を任せるような感覚で、作品世界に身を投ずれば、静かな内省の時間を体験する事ができるはずである。
 主人公が探し求める「生きがい」は、何処にあるのか…、彼女は何に、絶望しているのか…、これを観る若者は若者なりに、大人は大人なりに、永遠に答えの得られない「問いかけ」に、しばし、呆然となるのも良いのではないか。