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アニマトリックス

ずば抜けたセンスと、最新技術で構築されたアニメワールド。

各々、10分程度の短編を集めたアンソロジー形式だが、一本ごとに予算も時間も相当費やされているらしく、各作品とも、非常に完成度の高い贅沢な仕上がりの作品集になっている。

観るものによって好みの違いはあるだろうが、出来はどの作品をとっても優劣が付けにくいくらい素晴らしく、一応、映画「マトリックス」から発生はしているが、独立したイメージ・ワールドとしても観賞に耐える。

技術的には、全ての作品がCG作品で、フル3Dレンダリングしたものが一本と、他は手描きの線画をデジタルアニメートしたものに、2Dアニメ風にレンダリングした3Dアニメを融和させたものになっている。

殊に後者の技術に関しては、ここ数年、目を見張るような進歩が見られ、2年くらい前までのアニメ作品では、明らかに、手描きをベースにしたアニメ部分とフルCGの部分に遊離感があったが、本作を観ると、ほとんど違和感がなくなっており(メイキングを観ると、その部分を解決するソフト開発者が参加しているらしい)、一般の観客がCG作品と気付く事はほとんどないレベルにまで到達している。

手描きの線画部分にしても、作家が、感性が趣くままに伸びやかにデッサンしたものもあれば、ビデオ撮影した実写を元に、徹底した動きのリアリズムを追求したものなど、バラエティに富んでいる。

アニメのテクスチャー作りにこだわりを見せた「キッズ・ストーリー」や「ディテクティブ・ストーリー」のアート性、日常性の中に潜む微妙な異次元空間の不可思議さを丁寧に描いた「ビヨンド」、スタイリッシュで瑞々しいセンスを感じさせた「ワールド・レコード」、独特の感性に衝撃を受けたピーター・チョンの「マトリキュレーテッド」など、見どころを探し出したらきりがないほどの密度の濃さが本作品集にはある。

日本を含め、東洋のアニメーター、CGクリエーターたちが、世界でもトップレベルのセンスとチャレンジ精神を持っている事を改めて認識させてくれる、宝石のような傑作集である。