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零戦燃ゆ

1984年、東宝映画、笠原和夫脚本、舛田利雄監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和16年12月、台湾、高雄から飛び立った零戦は、フィリピンのクラークフィールド米軍基地を攻撃する。
日本の工業力を見くびっていたアメリカ軍は、高性能の戦闘機、零戦を始めて見て、その威力に驚かされるのだった。

その攻撃隊に参加していた一パイロット、浜田正一(堤大二郎)の回想シーン。

昭和14年、横須賀海兵団四等水兵だった浜田と水島(橋爪淳)は、鉄拳制裁に明け暮れる毎日の訓練に嫌気がさし、田舎へ逃げ帰ろうとしていた。

そこで偶然出会ったのが、下川分隊長(加山雄三)だった。

下川は、二人に新鋭の零戦を見せて、海兵団への慰留をするのだった。

かくして、翻意した二人は海兵団に戻り、適性検査の結果、浜田はパイロットに、水島は整備士への道を歩み始める。

昭和16年、横須賀航空隊に配属された二人は、懐かしい下川分隊長に再会するのだが、その下川は零戦の実験飛行中事故死してしまう。

三菱の技師、掘越(北大路欣也)と曽根(大門正明)は、その事故データを元に、零戦にさらなる改良を加えるのだが、下川の後任教官である小福田(あおい輝彦)は、その後、操縦席が鉄壁に守られた敵機を研究するにつけ、日本の戦闘機の操縦席のぜい弱さを思い知らされる事になる。
日本軍は、パイロットを消耗品と考えていたのである。

参謀達に、パイロット確保の重要性、操縦席の改良を進言する小福田だったが、その言葉は聞き届けられなかった。

そうした中、浜田は歴戦を勝ち抜き、名パイロットに成長して行く。

一方、水島の方は、空爆から零戦を守ろうとして負傷し、内地の名古屋に戻る事に。
そこで、彼は偶然、零戦の開発に関わっている途中事故死した父親を持つ、吉川静子(早見優)という少女に出会うのだった。

互いに心引かれる二人だったが、その後、空戦中、大火傷をおって、零戦を降りた浜田のために、水島は、自らの気持ちを殺して、静子に、浜田と付き合うようにしむけるのだが…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

製作費15億、いわゆる「8.15シリーズ」として作られた戦争大作である。

零戦の誕生から終戦までを、二人の青年の友情を核として描いているのだが、反戦テーマを描きたいのか、技術者たちの苦悩物語を描きたいのか、その辺がどっちつかずのような描き方になっており、正直な所、今一つ感情を揺さぶるようなものになっていないのが残念。

冒頭から、なかなか巧みな特撮技術で見せる戦闘シーンはいくつも登場するのだが、クライマックスに向って盛り上がって行くというような構成になっておらず、何となく「エピソードの羅列」にしか見えないのだ。

有名なエピソードなので仕方ない所かも知れないが、山本五十六長官を演ずる丹波哲郎の最後のシーンなども、かつて「連合長官 山本五十六」(1968)で、三船敏郎が演じた最後のシーンの繰り返しにしか見えない。

静子と出会って以降の、浜田と水島の関係も、何となくわざとらしさを感じるし、静子の心理変化も今一つ分かりにくい。

戦争映画ファンとしては、「独立愚連隊」などでお馴染みだった佐藤允が、ちらりと軍医役で登場するのが嬉しい。冒頭に登場する加山雄三とは、「独立愚連隊西へ」「どぶ鼠作戦」や「ゼロ・ファイター 大空戦」などで共演した仲である。

同じく、舛田監督作品「零戦黒雲一家」で主役を勤めた石原裕次郎が、挿入歌を歌って参加しているのも粋な所。

当時、新鋭だった川北特技監督の特撮は、なかなか見ごたえがある。

加藤武、目黒祐樹、南田洋子、神山繁、宅麻伸と出演者も多彩だが、キリヤマ隊長こと中山昭二と、モロボシダンこと森次晃嗣という「ウルトラセブン」コンビが参謀役で顔を合わせているのも、特撮ファンには楽しい。