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太平洋の翼

1963年、東宝、須崎勝弥脚本、松林宗恵監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

昭和19年6月、太平洋戦争末期、大本営海軍部では、制空権、制海権も失い、残存戦闘機も練習機を含め5000機程度になった今、戦う術は、もはや特攻しか残されていないという雰囲気が濃厚であった。

そんな中、唯一人、精鋭パイロットを召集し、新鋭の紫電改を使い、小さな地域からでも制空権の奪回を計り、徐々に戦況の回復を計るべきだと主張する男がいた。

千田中佐(三船敏郎)であった。

そんな千田の意見に理解を示した軍司令総長(志村喬)は、特攻計画自体は推進しながらも、千田に独自の航空隊の編成を任せる。

千田が選んだ精鋭の中核となる三人は、硫黄島にいた安宅信夫大尉(夏木陽介)、ラバウルにいた矢野哲平大尉(佐藤允)、そして、フィリピンにいた滝大尉(加山雄三)であった。

三人は、ただちに四国、松山にある343航空隊に召集される。

安宅大尉は、司令(田崎潤)の見送りを受け、長年、彼と生死を共にしてきた稲葉喜平(西村晃)と共に、迎えの潜水艦に乗り込む事に成功する。

矢野大尉の部隊は、敵の魚雷艇を奪い、途中で遭遇した友軍船に付いて行く形で日本に向う。

滝大尉の部隊は、トラックで移動途中、敵の待ち伏せや空襲を受け、何人もの部下を失いながら、かろうじてエジアゲ基地まで到着、その後、輸送機で日本へと向うが、又しても敵襲に出会い、パイロット(大村千吉)をはじめ、内地で待つ姉(星由里子)との再会を楽しみにしていた玉井兵曹(片岡光雄)も死亡してしまう。

損傷を受けた輸送機を何とか立て直すため、滝は、涙を飲んで、玉井らの遺体を全て空から捨てるよう命ずるのであった。

やがて、松山に集結した三人は、各々「新撰組」「維新組」「天誅組」という部隊を率いる隊長になる。

彼らの部隊は、神風特攻に向う兵士(中丸忠雄)たちから揶揄されながらも、千田の命令で、敵襲があるたびに、紫電改を退避させ続けていた。

やがて、敵の大部隊が接近、ここぞとばかりに、迎撃の命令がおりる・・・。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

円谷英二の特撮も冴える戦争大作。

安宅大尉を迎えに来る潜水艦の艦長に池部良、千田を補佐する司令に平田昭彦、矢野大尉らの乗った魚雷艇が遭遇する日本船の艦長に小杉義男、戦艦大和に乗り込む伊藤中将に藤田進以下、田島義文、河津清三郎、他に、砂塚秀夫、中谷一郎や宮口精二など、東宝常連組総出演の豪華さ。

中でも珍しいのは、佐藤允の部下の一人で、戦艦大和が大好きな、丹下太郎飛曹を演じている渥美清。

この時期、渥美は、東宝、東映などの作品に何本か参加しているものの、今一つ、飛躍の機会には恵まれなかったようだ。

戦争末期の話だけに、明るい結末にはなりようがないが、それでも、話の中核となる若手三人が内地に戻ってくる過程の各々のエピソードには、工夫が感じられ楽しめる。
そうした前半に比べ、後半の盛り上がりが今一つかも知れない。

生真面目さから、たえず対立しがちな加山と夏木の間に入って、いつも笑って取りなしている佐藤允の豪快さが(いつものパターンとはいえ)印象的。

弟の死際の様子を尋ねに訪れてきた姉役の星由里子と、彼女につらい告白をしなければならない加山との面会シーンは、若大将シリーズの二人の関係を知っている人間には、特別印象深い。
これも、一種の観客サービス的演出だったのだろう。

冒頭部分、実物大の新鋭機紫電改が披露されるシーンは迫力があるが、後年「零戦燃ゆ」でも、このシーンを意識したかのような実物大零戦披露のシーンがある。

娯楽映画としても及第点なら、特撮映画としても多様な技術が結集されており、高く評価すべき作品だろう。