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城取り

1965年、石原プロモーション、司馬遼太郎「城を取る話」原作、池田一朗脚本、舛田利雄脚本+監督作品。

織田信長、豊臣秀吉すでに亡く、世の大名たちが一斉に徳川家康になびこうとしていた関ヶ原の合戦直前の頃、独り家康に立ち向かう会津若松の上杉景勝の国元に、一人の侍が入り込む。

長脇差しを2本、背中にしょったその男、石田光成から景勝宛の密書を届ける途中で傷付いた伝令を助け、城に連れて行った所で名を聞かれ、車藤三(石原裕次郎)と名乗ったが、実体は、小早川秀秋の元を離れ、浪人の身となった、相当名のある侍らしかった。

彼は、かつての戦場友だちだった俵左内(千秋実)を訪ねる。
左内は金を集めるのが道楽という変わり種であった。

やがて、徳川軍が上杉討伐のため動きだしたという知らせが届く。
上杉藩は、それとあいまみえる用意をしていたが、気にかかるのは北の動き。
伊達正宗が、北の藩境に多聞山城を、赤座刑部(近衛十四郎)という腕利きに築かせつつあったのだ。

その話を左内から聞いた藤三、お前が全財産を軍用金として差し出せば、俺が多門城を取ってやろうかと言い出す。

その話を、左内から打ち明けられた直江山城守(滝沢修)は驚き呆れるが、思いきってやらせてみる事にする。

かくして、左内の全財産496両を牛の背に括り付け、左内と藤三は、北へと旅立つ。

途中、彦十(石立鉄男)という、伊賀から逃れて来た忍者崩れ、千里眼が得意というおせん(中村玉緒)という歩き巫女、堺からやってきた行商人、白粉屋十次郎(芦屋雁之助)という三人と出会い、その後、行動を共にする事になる。

彼ら5人は、一から三の砦まで三つの山城が築かれつつある、機屋(はたや)の集落に到着する。

もともと、機屋の住人だったおせんと、十次郎の話芸に紛れ、無事、集落に潜入した一行は、甚兵衛じいさん(藤原鎌足)の宿に落ち着くと、夜の闇に紛れて軍資金を集落内に運び込む事に成功する。

やがて、城建設に従事させられていた若者の中から、反抗心の強そうな与平次(鈴木やすし)や源三郎(高山英男)らをきっかけとして、働かされている農民達に接近した藤三は、彼らに軍資金を渡して信用させ、城乗っ取りの計画を打ち明け、協力を依頼するのだった。

たった二人の侍だけで城を取るという、一見不可能な事への挑戦という着想の面白さ。

それに、
もともと、地元の人間であるだけに、農民達と連絡を取りやすいおせん。
忍者崩れというだけに、何かと行動力を発揮する彦十。
憶病者だが、山城に住む赤座刑部の一人娘で、目の不自由な摩耶姫(松原千恵子)や、その取り巻きの女中らに近づく事が出来、しかも、火薬の知識も持っている十次郎という三人のお供の設定の面白さ。

迎え討つは、赤座刑部の右腕的存在、顔に火傷の痕がある渋谷天膳(今井健二)と忍者五貫匁(水木京二)。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

色々、アイデアやキャラクターが配され、それなりに見ごたえのある娯楽映画になっている。

ただ、全体の構成に問題があるのか、長尺過ぎるのか、クライマックスに向う緊張感の高揚はやや弱いように感じる。

本作での見所は、まだ青臭い忍者を演じている石立鉄男の初々しさと、中村玉緒の可憐さである。
後半の、藤三を慕う玉緒のひたむきさは、観ていて胸が熱くなる。

裕次郎の殺陣は、お世辞にも上手というようなものではないが、力技、迫力で見せている感じ。
クライマックスの対決では、相手役の近衛十四郎が、さすがの貫禄で画面を引き締めている。

千秋実と藤原鎌足の両名が出ているからか、どことなく、「七人の侍」や「隠し砦の三悪人」などを連想させる所がある。