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新馬鹿時代

1947年、東宝、小国英雄脚本、山本嘉次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

東宝がエノケン一座とロッパ一座と組んで作った、前後編合わせて3時間近い大作。

新町という場所の闇市が舞台。

新町交番に勤めている巡査、小原庄之進(古川緑波)は真面目一方の堅物を絵に書いてような人物で、ヤミ商売撲滅にまい進している。

今日も、ヤミ物資を持ち歩いていた貧相な男、小原金次郎(榎本健一)を追い掛けるが、途中で見失ってしまうのだった。

金次郎は逃げる途中で、16年前の中学生時代に自分が家を飛び出して以来、別れ別れになっていた姉のあや子(三益愛子)とばったり出会う。

聞けば、姉は御本家の息子で、今は警官の庄之進と結婚しているという。

写真を見せられた金次郎は、先ほどの巡査が義兄と知ってびっくり仰天!

その頃、庄之進は、外で仲間外れになっている一人息子の庄太に訳を聞いていた。
野球道具を一つも持っていないから、仲間に入れてもらえないというのであった。

ヤミの商品を一切買わないどころか、困った相手には、自分の安月給から金を恵んでしまうような庄之進の家は、今日食べる米にさえ事欠くような困窮振り。

その困窮振りを姉から聞いた金次郎、これからは、ヤミ屋をやっている自分が米を調達して来るといい、それから、度々、米を姉の元に運んでくるようになる。

その頃、その界隈のヤミ市を仕切る大野産業社長、大野源三郎(三船敏郎)は、政治家の柿本(進藤英太郎)や、やくざの親分らを抱き込み、さらなる成長を狙っていた。

今日も、ヤミ市の関係者を招いて宴会騒ぎ。

人に仕える事を嫌う金次郎は、気が進まないながらも、そこに出席させられていたが、密通者(渡辺篤)と共に警察隊が乱入、金次郎は、表で待ち伏せしていた庄之進に捕まってしまう。

それを聞いた金次郎の女房で、飲み屋を経営している、お照(花井蘭子)、日頃の恩も知らないで…と、庄之進の家に怒鳴り込みに行く。事情を聞いたあや子もびっくり。

警察署にやって来たお照とあや子の言葉から、これまで自分が知らないままヤミ米を義弟からもらっていた事実を知らされた庄之進、金次郎を釈放すると同時に、自分も責任をとって警察を辞職してしまうのであった。

あらゆる希望を失い、田舎へ帰ろうとしていた庄之進は、ある日、一通の電報を受け取る。
何と、自分の所有していた山で石炭が発見され、その山が1千万で売れたというのであった!

ここまでが前編。


後編は、にわかに大金持ちになった庄之進と金次郎(義兄弟という事で、分け前を半分もらったのだ)が、持ち付けぬ金に振り回され、段々堕落して行く様を描いていく。

庄之進の方は、豪邸を購入し、毎晩遊興に明け暮れるようになるのだが、女房のあや子の方も、それに負けず劣らず豪奢な生活で家を空けるようになり、一人で留守番をさせられるようになった庄太は、ある日、火災を起こした自宅で大やけどした状態で発見される。

金次郎の方は、一人でヤミ商売の会社を立ち上げますが、大野産業の大野や田代常務(志村喬)らに言葉巧みに騙され、三百万の大金をそっくり強奪されてしまうばかりか、愛想をつかしたお照にも逃げられてしまうのであった。

何もかもなくした二人は、最後の使命として、ヤミの支配者、大野逮捕に全力を傾注する事を決意する…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

全般的に「喜劇」というよりも、「社会風刺」「人情劇」の色合いが濃い。

最後の方で、かなりシリアスな社会批判のメッセージが、ロッパの口から発せられる…など、後年の黒澤作品「悪い奴ほどよく眠る」のラストを彷彿とさせるような部分もある。

どちらかというと、エノケンは狂言まわし、ロッパの方が主演であるかのような印象を受けるのも、ペーソス溢れる演技ができるロッパの方を主体にした方が、ドラマにしやすかったためではないか。

三船敏郎は、裏社会を牛耳ろうとする野心溢れる若社長役で、セリフ回しなど、まだどこか一本調子でぎこちないですが、エノケン、ロッパ相手に 、堂々たる存在感で対峙している。

冒頭近く、開閉する勝鬨橋を映した珍しいシーンがあったり、タイトル部分のセルアニメ、大野に金をだまし取られ、少し頭が変になったエノケンが、大野産業のビルの屋上でバスター・キートンばりの動きを見せるシーンの特撮合成、ラスト近く、銀座の交差点を真上から捉えたショットが、立体アニメで表現されていたり…と、技術的な工夫も満載されており、見どころは多い。