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幸せなら手をたたこう

1964年、大映東京、長谷川公之脚本、湯浅憲明監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

人気アイドルの坂本九ちゃんが、銀座で一日所長として、パトカーの中から「幸せなら手をたたこう」を歌いながら、練り歩いていた。

車から降りた九ちゃん、「挑戦状」なる文字が書かれた手書きのポスターに目をとめる。
何でも、近ごろの若者はなっとらんから、明朝、我と思わんハイティーンの諸君は、日比谷公園に集合して、自分とマラソン勝負をしようという内容だった。

興味を持って、集まった群集にその内容を呼び掛ける九ちゃんだったが、本人は翌日から北海道へ移動しなければいけないという。

マスコミも注目する中、結局、当日の早朝に集合したのは、ポスターを書いた本人だという、ボートなどを作っている佐々木製作所社長、佐々木(宇津井健)と、わずかばかりの若者たち、そして遅れてやってきた前田親子であった。

勝っても賞金もでないと分かると、やる気を失う連中も出て、実際に走り出すと、あっという間に逃亡組も続出、バラバラの状態になるが、そこに通りかかったのが一台のパトカー。

佐々木を中心に走っていた数名の参加者は、全員「道路公通法違反」の現行犯として、警官(丸井太郎)に連行されてしまう。

警察署で名前を明かしたのは、佐々木以下、おにぎり屋「なにわや」の主人前田(中村雁治郎)とその息子一郎(高橋元太郎)、クリーニング屋の出前、小川明(堺正章)、派出婦会をやっている母親を持つ林圭太(高見国一)、建築学科の学生、高木弘(倉石功)、美容院を辞めて参加したという中原ゆき(姿美千子)らであった。

佐々木は、申請書の提出を知らなかったミスを詫び、来週の日曜日、もう一度、マラソンをやり直そうと提案する。

妻を亡くして独身の佐々木は、区から払い下げられた土地に社員寮をこしらえ、そこで新人達を鍛えたいという夢を具体化しつつあったが、区議会の方では、ぐずぐず返事を渋り始める。

一方、ゆきは、意気投合した若者たちの一人、圭太の母親の所の派出婦として働きはじめるのだった。

次の日曜日に再び集結した先日のメンバーは、急用で参加できなくなった佐々木に、では、その代償として、ドライブをしたいから車を貸せと言い出す。

不承不承、車を貸した佐々木だったが、返却された車は、ドライブの帰り道で事故にあい破損したものだった。

修理代3万円を弁償するために、ゆきは、佐々木の会社でお手伝いさんとして働く事になるが、それが、若い仲間達の間に、思わぬ誤解を生む事になって行く。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

坂本九のヒット曲をベースにした明朗な青春ドラマ。

九ちゃん本人は多忙だったためか、冒頭とラストの2シーンだけにしか出ていない。

大人代表として、妙に張り切って説教臭い宇津井健と、大人たちに反発する倉石功ら若者たちの青臭い理想像とのぶつかり合いがテーマとなっているのだが、さすがに、全体的に時代を感じさせるものになっている。

将来レストランを持つ事を夢見る高橋元太郎(水戸黄門のうっかり八兵衛)や、カーネギーホールで、大好きなハーモニカのコンサートをやりたいと夢見る高見国一、田舎から単身上京して、東京で自分の美容院を持って自活して行きたいと憧れる姿美千子など、今観ると、皆、ものすごく健全なのである。

逆にいうと、60年代前半くらいまでは、そういう若者像でも観客に受け入れられたのだろう。
東京オリンピック直後の、正に高度成長期まっただ中であり、日本人全体がまだどこかに純朴さを残しており、そんなに屈折していなかった平和な時代の映画という事かも知れない。

今観て、興味深いのは、やはり、堺マチャアキと高橋元太郎の若さ。

マチャアキの方は、ザ・スパイダースに参加したばかりで、まだアイドルとして有名になる直前の頃だろうし、元太郎の方は、アイドルグループ、スリーファンキーズから1962年に独立して、役者などをやりはじめた時期だろう。

監督の湯浅氏は、この翌年から「大怪獣ガメラ」シリーズを撮り、有名になって行く人である。