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九ちゃん音頭

1962年、松竹大船、山田洋次+不破三雄脚本、市村泰一監督作品。

神津島出身の漁師の長男坊、海野一八(坂本九)は、東京のとある商店街にある八百作という店に住み込んで働きはじめる。
先輩格は、弘(山下洵二)という青年。

一八は、さっそく弘から、商店街で働く若者たちが集まる「ヤナギ」という店に連れて行ってもらい、仲間を紹介してもらう。

そこのママから、一八は、その名前を足して「九ちゃん」という愛称を付けてもらう。

九ちゃんは、駅向こうの鰻屋で働いている幼馴染みの大津町子(十朱幸代)と連絡を取るが、町子は、八百作の隣の肉屋で働く江川不二夫(ジェリー藤尾)というちょっと不良じみた男と付き合っている事が分かる。

そんな九ちゃん、ヒロシと一緒に配達をする内に、金森という家でお手伝いをしているさよちゃん(桑野みゆき)というかわいらしい女の子と知り合うようになる。
さよちゃんは、商店街中の男の子たちが付き合いたがっているアイドル的存在だったのだ。

やがて弘はとある会社の採用試験に合格し、店を辞めてしまうし、隣の不二夫も、ボクサーになりたいと肉屋を辞めてしまう。

九ちゃんは、集団就職で上京してきた妹の清子(渡辺トモコ)と久々に再会、互いを励ましあうが、その帰りの電車の中でさよちゃんと出会い、急速に、彼女の事を意識するようになって行く。

彼女が、9日の日にしか休みが取れない事を知った九ちゃんは、商店街の店主連中に頼んでいた一斉休日を、毎月九日に強引にしてもらうのだった。

ところが、肝心の休日がやって来ると、商店街中の男たちがさよちゃんにデートを申し込み、結局、さよちゃん、町子を含めた若者たち全員で海に遊びに出かける事に。

その時、すっぱい夏ミカンをたくさん食べていた町子を見て、さよちゃんは、彼女が妊娠していると勘違いして、それを九ちゃんに話してしまう。

町子の事がずっと気にかかっていた九ちゃんは、夜の仕事をしていた不二夫の所に出向いて行き、町子のために戻ってくるように説得するのだった。

さらに、憧れのさよちゃんに、家のおばあさん(浦辺粂子)が世話した、見合い相手がやってくる事が判明、九ちゃんはじめ商店街の若者たちはソワソワ・・・。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

坂本九主演の歌謡青春ドラマ。

八百作の主人に中村是好、肉屋の主人に桂小金治、さよちゃんお妹役で森山加代子、商店街の仲間達に、石川進やパラダイスキングのメンバーたちが登場する。

ジェリー藤尾の元奥さんだった渡辺トモコが歌うシーンが珍しかったりする。

♪とかくこの世はままならぬ〜♪という「九ちゃん音頭」の歌詞がヒントになっているためか、それとも、後年「男はつらいよ」シリーズを撮る事になる山田洋次氏が脚本を担当しているためか、他愛無い青春ものと思いきや、後半は何だか「寅さん」風の展開になって行く。

島から出てきて、八百屋の手伝いを始めたばかりの九ちゃんが、レタスを知らなかったり、海水浴にいった九ちゃんが赤ふんをはいていたりする所が時代も感じさせ愉快。

八百屋の店頭に並んでいる野菜の形も、何やら今と微妙に違っている。
レタスやピーマンは、今のものよりも、かなり形が小さい。

純朴な地方出身の若者たちが、東京でひたむきに働く姿には、今となっては隔世の感を禁じ得ないが、当時、こういう作品を観て、勇気づけられていた若者が多数いたという事だろう。

坂本九の明るく憎めないキャラクターが、植木等の破天荒なバイタリティと共に、高度成長期の日本を元気づけた貴重な存在だった事が改めて分かる作品となっている。