TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

白昼堂々

1968年、松竹、結城昌治原作、吉田剛脚本、野村芳太郎脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

北九州、小倉駅。

一人の男(坂上二郎)が若い女性から財布をすられ、それを追い掛ける途中で、別の若者(萩本欽一)の食べていた弁当を踏み付けてしまい一悶着。

その騒ぎを見ていた中年男性、自ら刑事と名乗り、その女性を連行して行く。

しかし、実はその男性は、元「おけやの銀三」といわれたスリの名人富田銀三(藤岡琢也)だった。
今は足を洗い、東京の丸急デパートの保安係になっていたのだが、たまたま福岡で知人の葬式に参加した帰りだったのだ。
まだ、かけ出しのスリ八百橋ユキ(生田悦子)から、彼女の元締めの名前「ワタカツ」を聞き出した銀三、懐かしさのあまり、彼女に、ワタカツ事、渡辺勝次(渥美清)の住まいに案内させる。

二人は、古いスリ仲間だったのだ。

ワタカツは、ボタ山に囲まれた田川郡の元炭坑の町、川又という集落に40人の仲間と共に住んでいた。
銀三が驚いた事に、山が閉鎖され、職を失った彼らは、集団ですり・万引きをくり返す犯罪集団と化していたのである。

銀三と相前後する形で、元ヤクザだった野田(佐藤蛾次郎)も、ワタカツを頼って訪ねてくる。

銀三は、昔なじみのよしみで、ワタカツにデパートの万引きの効率の良さを話して聞かせるのだった。

それから一年後、東京の丸急デパートで、警備中の銀三は、和服姿で万引きをしていた美女、腰石よし子(倍賞千恵子)を捕らえるが、相手の方が一枚上手で、彼女を帰した後で、自分の財布をすられていたのに気付く。

さらに驚いた事に、銀三は九州で知り合ったユキや野田の姿も店内で見つける。
ワタカツ一行が上京して、本格的にデパート荒らしを始めたのだった・・・。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

実話をベースにして書かれた犯罪人情もの。
これと全く同じ話をベースとした映画を、ナベプロが3年後に植木等主演で作っている。
「喜劇 泥棒大家族 天下を取る」という作品である。

さて、本作では…、

ワタカツと銀三を追い掛ける定年間際の老刑事森沢に有島一郎。
常磐の炭坑出身の新人刑事で、ユキと知り合う事になる寺井に新克利。
スリ係班長安藤に穂積隆信。
怪し気な弁護士にフランキー堺。
炭塵爆発で、2度も記憶喪失になっている通称マーチに田中邦衛。
そのマーチがほのかに慕っている清水豊代に桜京美。
銀三の妻、春子に三原葉子。
川又地区の駐在に佐山俊二…と多彩な顔ぶれ。

本作での注目点は、「男はつらいよ」の名コンビ、さくらこと倍賞千恵子と寅こと渥美清が夫婦になる事である。渥美清が求愛を示すため、倍賞に強引に抱きつくシーンは見物。

特に、鉄火肌で気が強く、合理的な考えを持つ現代女性を演じている倍賞千恵子の意外さ。
今考えると、この役は、彼女の妹(倍賞美津子)の方が似合いそうな役である。

しつこい刑事に対して、着物をはだけ、太ももまでさらけだして啖呵を切るシーンまでもある。

この当時は、まだ、倍賞の方が、渥美清よりは格上だったはずである。

正直いって、本作での渥美は、一応主役ではあるものの、それほど印象的という訳ではない。
いつもの通りの渥美清といった感じ。

むしろ、桃江という独り娘の事もあって一旦は更生しながら、又、ズルズルと犯罪に手を染めるようになってしまう銀三を演じる藤岡琢也と、彼らを執念深く追い詰める森沢役、有島一郎の姿の方が心に残る。

後年「砂の器」(1974)を撮る事になる野村監督らしく、本作も、コメディというよりも、犯罪を犯してしまう人間の弱さ、哀しさにスポットを当てた、ちょっとほろりとする人情劇になっている。