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動脈列島

1975年、東京映画、清水一行原作、白坂依志夫脚本、増村保造脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

名古屋市熱田区、病身にありながら家族に見捨てられ、独り寝たきりの老婆、野上ヤス(田中筆子)は、すぐ近くを通る新幹線の騒音を聞く度に、戦時中のB-29を思い出し、発作を起こしていた。

それを見守る研修医の秋山宏(近藤正臣)と、彼の恋人であり、今や看護婦代わりとなって手伝っている薬剤師の君原知子(関根恵子)は、その老婆の最期を悔しい思いで看取っていた。

秋山は、新幹線公害の調査を独自にしていた関係上、老婆の死も、新幹線公害の結果だと結論付けていた。

その頃、国鉄総裁(山村聡)に詰め寄る中京地区新幹線公害原告訴訟団の一行(加藤嘉、橋本功ら)は、煮え切らぬ相手の態度にいらだっていた。

一方、秋山は知子に、病院からニトログリセリンを15cc盗み出せと頼んでいた。
さらに、自分はこれから、ヨーロッパ旅行に出かけるとも。

秋山は、自宅でこしらえた時限爆弾を、新幹線のトイレの中に押し込む。

後刻、発見された時限爆弾には、ニトログリセリンが詰め込まれていたものの、時限装置は意図的に外され、代わりに「警告状」なる封書が同封されていた。

新幹線の騒音を60ホーン以下に下げる事、車体振動を毎秒0.6m以下に押さえる事、スピードを70km以下に落とす事、線路の両脇に50mの緩衝地帯を設ける事、これら4つが実行されなければ、10日後に、新幹線を破壊するという内容であった。
この警告が嘘ではない証拠に、明日、新幹線を止めてみせるという。

警察庁長官(小沢栄太郎)は、ただちに、全国20万人の警察官中、最も優秀とかねがね見込んでいたエリート、滝川(田宮二郎)に捜査の全権を任せるのだった。

滝川は、各部署から集められた精鋭の刑事達、山崎(小池朝雄)、相良(近藤洋介)、村田(渥美国泰)、明石(井川比佐志)、中野(勝部演之)ら共に、藁をも掴むような捜査に着手する事になる。

翌日、豊橋近辺で「こだま」が脱線、犯人が本気だと分かる。

徹底した捜査の結果、滝川らは、名古屋大学医学部の研修医、秋山宏が怪しいと目星をつけるのだが、当の本人はヨーロッパ旅行に出かけて、国内にはいないという。

しかし、滝川の直感は、秋山が国内に潜んでいると見抜くのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

何か因縁があったのか、東映の「新幹線大爆破」と同じ年に公開された、非常に似通ったシチュエーションの作品。

「新幹線大爆破」が、特撮も使ったパニック・サスペンスとして、それなりにけれん味たっぷりに描かれていたのに対し、本作の方は、「新幹線公害」を告発する社会派風テーマに主眼を置いているだけに、全体的にはひどく地味な印象がある。

過去、この作品も何度か観ており、主役を演ずる近藤正臣は鮮明に記憶していたのだが、捜査班の主軸となる田宮二郎の方は、すっかり忘れていた。

本作での田宮は、生真面目そうなエリート捜査官という、いかにもステレオタイプなキャラクター以上の存在ではなく、天才的犯罪者と拮抗する人物としては、印象が弱いのである。

後半、登場する梶芽衣子にしてもしかり。

同じ東京映画「修羅雪姫」(1973)、「修羅雪姫 恨み恋歌」(1974)に次ぐ出演作だが、こちらも期待するほど活躍しない。

関根恵子も、後半は、ほとんど拘置されているだけ。

では、主役を演じている近藤正臣が印象的なのかというと、正直、これも弱いのである。

つまり、全体的に、色々な役者さんたちが賑々しく出ている割には、どのキャラクターも、特に印象的に描かれている訳でもなく、全体的にありがちなサスペンスものを観ている感じ。

当時、国鉄が撮影に協力しなかった事情があったにせよ、もう少し、映画的な見せ場が欲しかった。

社会派映画としても、中途半端な出来上がりのような気がする。

佐原健二、平田昭彦といった東宝系の役者さんに混じり、テレビ東京(今ある同名のテレビ局の事ではない)のディレクターとして、峰岸徹なども顔を見せているのに注目。