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大佛開眼

1952年、大映京都、長田秀雄原作、八木隆一郎脚本、衣笠貞之助監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

今から1200年前、8世紀の半ば、天災や飢饉が相次ぎ、都を一旦、近江の紫香楽に移していたが、天平17年、再び都を奈良に戻すのに合わせ、帝は五丈3尺の大きさの大仏を建立する事を決意する。

川で水を汲んでいた麻夜売(京マチ子)は、いきなり、近くにいた若者に怒鳴られる。
河原に、彼が描いていた仏画を彼女の足が消してしまっているというのであった。
その若者は、行基大僧正(大河内伝次郎)の窯を手伝っている、天才的な画力を持つ国人(長谷川一夫)といった。

二人は、しばらく後、ひょんな事から再会し、急速に親しくなって行く。
それを快く思わなかったのは、麻夜売に目を付けていた同じく絵師の新城小楠(植村謙二郎)、彼は、大仏建立計画に国人と共に参加するのだが、国人の才能にも嫉妬して行く事になる。

藤原ノ仲麻呂(黒川弥太郎)の推挙で、造仏長官に任ぜられたのは、身体的ハンデを持つ国中ノ公麻呂(小沢栄)だった。彼は紫香楽で一回、造仏に失敗していた事もあり、新しい依頼に今一つ自信が持ちきれないでいたのだが、ある日、麻夜売の姿を崖に描き写している国人を発見、早速、自分の配下に入れる事になる。

大きな仕事ももらい、張り切る国人とは対照的に、二人だけの楽しい逢瀬を奪われた麻夜売は、仕事なんて辞めてくれと、我がままをいうのであった。

その頃、藤原ノ仲麻呂にライバル心を持っている橘ノ奈良麻呂(岡譲二)は、何とか、大仏建立が失敗する事を願い、森女(日高澄子)という祈祷師に命じ、地獄谷の洞穴の中で、建立事業を失敗を願う呪詛を執り行なわせていた。

しかし、天平18年、大仏の原型が無事完成する。
鋳型に銅を流し込む作業を開始した直後、鋳型の一部が破損、流れ出した銅で、国人は足に火傷を追ってしまう。

その様子を遠くから眺めていた、先の右大臣の後家婦人、橘ノ咲耶子(水戸光子)は、美貌と才能を持つ国人に興味を持ち、彼を呼びつけては、自分の彫像を作れと、権力と色仕掛けで無理強いをする。

結局、その依頼をしぶしぶ受けて作業を始めた国人の姿に嫉妬したのが麻夜売。

彼女は半狂乱となり、大仏の原型を破壊しに出かけるが、その姿を陰でうかがっていた小楠の入れ知恵で、大仏の右手を壊す計画を二人して実行する事になる。

その妨害工作による作業中断の責任を取らされ、公麻呂と国人は解任され、建立事業も継続が危ぶまれるようになるが、病身を押して、帝に直訴した行基の最後の願いが聞き届けられ、大仏建立は継続される事になる。

しかし、その時、行基大僧正自身はすでに入寂していた。

良心の呵責に苛まれた麻夜売は、事実を国人に告白、小楠は一旦は捕らえられるのだが、奈良麻呂の手引きにより、再び、大仏完成を阻止する妨害工作を始めるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

芸術祭参加作品。

実物大の大仏建立現場をそっくり再現した屋外セットは迫力十分。
エキストラの多さもあって、そのスペクタクルには圧倒される。

仕事に全力で打ち込む事に喜びを感じる国人や公麻呂ら男の論理と、彼を愛の力で独占しようとする、奔放な性格である麻夜売の女の論理との葛藤。
橘ノ奈良麻呂や、小楠といった悪役らの悪だくみによるサスペンス。

踊りが得意な麻夜売を中心として、時々劇中に挿入される民衆たちの踊りのシーンの躍動感。

京マチ子は、美しいというかキュートというか、実に魅力的。
そんな彼女の兄を演じている殿山泰司の、いつも変わらぬ朴訥とした姿も、逆に印象的である。

ラストシーンも切ない。

娯楽性、芸術性が一体化した、実に見ごたえのある作品となっている。