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ブルークリスマス

1978年、東宝映画、倉本聡脚本、岡本喜八監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

墓地下にある理髪店に頻繁に通う堅物そうな男、国防庁参謀本部に勤める男らしい。
一緒に散髪していた同僚らしき男が、店を手伝う娘が目的なのだと打ち明ける。

堅物そうな男の名は沖(勝野洋)、同僚はパイロットの原田(沖雅也)、そして、理髪店の娘の名は西田冴子(竹下景子)といった。

世界中の科学者が集まる京都国際会議で、日本の兵頭博士(岡田英治)が、突然、予定にない、独自のUFOや宇宙人肯定論を展開、満場の非難を浴びる。

その後、宿泊先のホテルに引き上げた兵頭博士は、何者かによって拉致されてしまう。

その頃、沖らは、上官の沢木(高橋悦史)から特殊部隊への転属を命じられていた。
恵庭基地で、原田は、もう一人のパイロット後藤と共に、UFO出現で出撃するが、そのまま消息を絶ってしまう。

一方、国営放送であるJBC社内では、報道部の南課長(仲代達也)が、友人である週刊テレビの記者木所(岡田祐介)から、奇妙な打ち明け話を聞かされていた。

彼の恋人で、今度JBCの大河ドラマ「日本元年」の主役に抜擢された新人女優高松夕子(新井晴美)が、以前、指を怪我した時、流した血の色が青かったというのである。

その話を、何気なく五代報道局長(小沢栄太郎)に漏らした南は、失踪した兵頭博士の行方を追うよう指示される。

兵頭夫人(八千草薫)始め、大学関係者たちからの証言を聞く内に、兵頭博士が、イカの血液に興味を持っていた事が判明する。イカの血はタンパク質と銅が結合したもので青いのだという。

その頃、世界中から、青い血を持つ人間が少しづつ見つかりはじめる。
彼らは皆、UFOに遭遇した後、血が青くなったらしい。
日本でも、そうした血を持つ親から青い血を持つ新生児が生まれはじめるが、秘かに病院を訪れた怪し気な男たち(天本英世、岸田森)からの指示によって、母子共に処分されていた。

同時期、世界的な人気グループ、ヒューマノイドが来日、彼らが都内のバーで開いていた秘密パーティに半ば強引に連れて来られた高山夕子は、突然、乱入してきた警察によって、麻薬所持の現行犯として逮捕されてしまう。

UFO調査機構として噂されていたアメリカのブルーノートという組織に博士がいるらしいという情報を得た南はアメリカへ飛ぶのだが、そこで、兵頭博士と会えたものの、詳しい話を聞く前に博士は又しても何者かに拉致されてしまい、南自身も、日本大使館員から強制的に帰国させられた後、五代から直々にパリ転勤を言い渡された後、以後一切、この事件から手を引くよう命じられる。

やがて、政府は、日本人全体の血液検査を実施しはじめるのだった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

日本映画では大変珍しい、大人向けの本格的SF謀略サスペンス。
特撮の類いは一切登場しない潔さ。

西田冴子の兄役で田中邦衛、JBCの沼田報道部長に中条静夫、吉池理事に島田正吾、相場国防長官に芦田伸介、宇佐美幕僚長に中谷一郎、司令官に稲葉義男、他に大滝秀治、大谷直子、神山繁など(ちょっと珍しい所では、南を乗せるタクシーの運転手役で、堺左千夫が出ている)、一見華やかな大作を思わせる布陣なのだが、内容はかなり地味で重いメッセージ作品となっている。

前半は、南役の仲代達也が主軸となって進行する、完全に「X-ファイル」の世界。
後半は、西田冴子と深い関係になった沖から見た、日本社会のナチズムへの傾斜の不気味さを描いて行く。

どんなに重いテーマでも、それなりに軽快な娯楽作品に処理できるはずの岡本喜八監督にしては、本作は珍しく、映画的見せ場にも乏しい、全体的に弾まない作品となっている。

暗示的といえば暗示的なのだろうが、超能力を持つメンバーがいるというビートルズ並みの世界的人気グループとか、後半、世界中で発見される大量のUFOが、一体何を意味するものなのか、最後まで明らかにされないもどかしさが残る。

この作品で出会った(?)脚本の倉本聡と田中邦衛は1981年から「北の国から」を一緒に始める事になるし、田中邦衛と岡本喜八監督は同年の快作「ダイナマイトどんどん」(1978)、今や東映社長となった岡田祐介氏と岡本監督は、「にっぽん三銃士 おさらば東京の巻」(1972)「同 博多帯しめ一本どっこの巻」(1973)「吶喊」(1975)などですでに仕事をしている仲である。

傑作か失敗作か、観る人により「賛否真っ二つ」に分かれる作品ではないだろうか。