1988年、アメリカ、ティム・バートン監督作品。
町のミニチュアを作るのが趣味のアダム(アレック・ボールドウィン)とバーバラ(ジーナ・デービス)のメートランド夫妻は、子供がいないせいもあって、ちょっと広すぎる屋敷に住んでいたため、しょっちゅう、家を売れといいに来るジェーンに悩まされている他は幸せに暮していた。
そんな彼らがある日、町への買い物に揃って車で出かけた帰り道、犬を避けようとして、橋から車が転落、二人はホウホウの態で帰宅するのだったが、何だか、屋敷内の様子がおかしい。
自分達が川から家まで帰る途中の記憶も定かではない。
外へ出てみたアダムは、全く異世界に変貌している外界に驚き、そこでようやく、自分達が「死んだ」のだという事実に気がつく。
彼らは、屋敷内で「新人死者ハンドブック」という本を発見、死者の世界のルールを少しづつ学ぶ事になるのだった。
そんなある日、二人の屋敷に、見知らぬ一家が引っ越してくる。
亭主のチャールズ(ジェフリー・ジョーンズ)と、彫刻科気取りの後妻デリア(キャサリン・オハラ)、そして、娘のレディア(ウィノナ・ライダー)、そしてインテリアデザイナーのオーソ(グレン・シャデックス)の4人。
そのあまりの俗物振りに絶望したアダムとバーバラは、何とか、この家族を追い出そうと、ゴーストとして彼らの前に出現して脅かそうとするのだが、無神経な彼らには全くその姿は見えないらしかった。
唯独り、レディアを除いては・・・。
▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼
「エクソシスト」の発想を逆にした、ゴーストが人間を屋敷から追い出そうと苦心するコメディ。
お化けの側から見た「お化け屋敷」のアイデアというのは、昔からアニメなどでは良くあるパターンなのだが、それに色々アイデアを加えて、巧く膨らませている印象である。
自分達の力量では、人間を追い出すのは無理と悟った二人が、霊界でも鼻つまみの厄介者、ビートルジュースのベテルギウスを呼出してしまった事から騒ぎは大きくなって行く。
そのビートルジュースに扮するは、マイケル・キートン。
全編、ティム・バートンらしい、独特のこだわりとお遊び感覚に溢れた洒落た作品になっている。
まずは、ミニチュア趣味。
冒頭、町の俯瞰がミニチュアの屋敷にすり変わるトリッキーな出だしから、途中、アダムが作ったミニチュアのジオラマと現実の町がリンクするようなアイデアなど、ミニチュア好きにはたまらない趣向が用意されている。
さらに、霊界のシーンで登場する数々の「キモカワイイ」キャラクターたちや、要所要所で披露される人形アニメのテクニックなど、子供っぽい発想と視覚的な仕掛けを堪能させてくれる。
主題歌も、何やら、バートンが敬愛する「ゴジラ」に登場する伊福部マーチに似通って聞こえるのは偶然だろうか。
ビートルジュースが繰り広げるスラプスティックギャグのどぎつさは、日本人には若干抵抗があるかも知れないが、主役を演じる若夫婦の爽やかさと、傷付きやすい少女を演ずるウィノナ・ライダーの初々しさに中和され、ギリギリの所でくどくなるのを防いでいるように思われる。
やや癖のあるティム・バートンの作風に拒否反応があるという人以外には、抵抗なく楽しめるのではないだろうか。
アーティスト気取りの義母のキャラクターが一見嘘臭そうで、実はリアル。
この辺は、バートン自身の経験と観察眼から生まれたのだろう。
アーティストはアーティストの嫌らしさを知る…という事か。
そのヤな女を中心に、夕食の席で、突然、列席した俗物たちが「バナナボート」を唄い踊る様は阿呆らしくて愉快。
