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大空の野郎ども

1960年、東宝、木村武脚本、古澤憲吾監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

東京、大阪間を3時間で結ぶ「夢の超特急」の実験走行が行われている線路上に一人の男が立ちふさがったため、「特急こだま号」はスピードを緩めてしまう。

走行妨害スレスレの行動で特ダネ写真をものにした青年は、新聞社の25才の新人カメラマン、「チョコ」こと、清川(夏木陽介)であった。

しかし、その無軌道振りに呆れた池山部長(稲葉義男)は、清川を航空写真の部署に廻す事にする。

早速、三原山の噴火を撮影するため飛び立った清川は、パイロットの磯辺(佐藤允)に、いつものように無茶な要求をするが、東雲飛行場で待機していた同僚に投下したはずのフイルムのパラシュートが、気付かない内にセスナの操行舵にひっかってしまい、危うく不時着寸前のピンチに陥る。

そんなチョコが、その日何気なく撮っていた磯辺のアップ写真が、後日写真展で特賞を取り、展示される事になる。

チョコは、展示会場でその写真を熱心に見つめる田村杏子(白川由美)という金持ちの令嬢風の美女と知り合う。

彼女の気を惹こうと、飛行機に乗せてやるといってしまった清川は、彼女がその言葉を本気にしたので、ちゃっかり磯辺を馴染みである銀座のクラブに呼出し、彼女とその仲間達に紹介するのだが、生真面目な磯辺はその話に乗ろうとはせずすぐに帰ってしまう。

杏子は、そんな磯辺の方にますます興味を持つようになる。

列車転覆事故が起こった日、何とか取材に飛び立ちたい清川は、天候不良を理由に飛行機を飛ばせない航空部主任の鎌田(田崎潤)や磯辺たちの態度にやきもきさせられるが、翌日、ライバル新聞社にすっぱ抜かれた事がきっかけとなり、編集部と航空部の間は一挙に陰悪な関係となる。

しかし、そこは、編集部と航空部の宴会の場がもたれ、何とか事なきを得るのだった。

主任の鎌田は、戦争中パイロットだったのだが、今は管理者として部下達の安全第一を旨としており、そんな蒲田の考えと、記者魂に燃える清川の両方の気持ちを理解する磯辺は複雑な立場に立たされていた。

杏子からのアプローチに対しても、危険と背中合わせの職業を持つ磯辺は、自分の将来を考え、今一つ積極的になれないでいたのだった。

やがて、戦後最大級の台風が本土を襲い、通信手段は寸断され、新聞社では航空部だけが頼りという状態になる。
やんやの催促をして来る社会部の関口(佐々木孝丸)からの電話に、長時間苦悩した後、暴風雨の中、飛ぼうとする磯辺を制して鎌田本人が飛ぶと言い出す。

だが、無理な離陸を決行した鎌田機は高圧線と接触、墜落してしまう。

死亡した鎌田の遺体を前に、磯辺は清川に詰め寄る。「お前が殺したんだ!」…と。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

無鉄砲でお調子者だが、直情型の若きカメラマン清川と、冷静沈着な現実型の青年磯辺の、奇妙な友情関係を綴っていくドキュメンタリータッチのドラマ。

一部ミニチュア特撮がある他は、基本的に全編、読売新聞社の協力による本物のニュース映像が使われている。
三原山噴火、タンカー座礁、台風で水没した町並み…、飛ぶ飛行機の映像なども含めて、全て本物である。

そのために、非常に緊迫感のあるドラマに仕上がっている。

各々に苦悩を抱えている夏木陽介、佐藤允、白川由美らの青春像も瑞々しい。

クラブの女給として、ほっそりした時代の市原悦子がちらり登場したりする。

クレージー映画などで知られる古澤監督だが、 こんな作品も作っていたのかと驚かされる、異色青春ドラマの佳作である。