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未来世紀ブラジル

1985年、イギリス、テリ−・ギリアム監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

午後8時49分、20世紀のどこか。

そこは、テロリストが暗躍する情報管理社会だった。

情報省の役人が、仕事中、天井にへばりついた一匹のゴキブリを叩き殺したため、その死骸が、動作中のコンピューターの中に落下してしまい、その結果、コンピューターは誤作動を起こしてしまい、テロリストの容疑者「タトル」という人名を「バトル」と印字し損ねてしまうが誰もそのミスに気付かなかった。

結果、何の罪もない市民のアーチボルト・バトル氏は、家族の目の前で当局の差し向けた警察に逮捕され、拘束服を着せられたまま、何の弁明も聞く事もなく、そのまま情報省の拷問室へと連行されてしまう。

一方、整形での若返りにしか興味にない富裕な母親を持つ上層階級の役人サム・ラウリ−(ジョナサン・プライス)は、最近頻繁に、羽をはやして空を飛んでいる自分を夢で観ていた。

その夢の中には、決まって、金髪の美女が登場していた。

彼はエリートでありながら、何故か出世を望まず、記録部などにいつまでも燻っていた。

そんな彼に、心配した母親からの口利きがあったのか、見合いと部替えの話があるが、サムはどちらにも興味を示さなかった。

ある日、彼は、情報局の本部内で、陳情に来ていた一人の女性を発見し驚愕する。
夢の中に出てきた女性とそっくりだったからである。

彼女は、実は、逮捕されたバトル氏の二階に住んでいたトラック運転手のジル・レイトン(キム・グライスト)で、不当逮捕の事を講議しに来ていたのであった。

サムは、何とか彼女の身元を探ろうと、断わるつもりだった部署替えに応じて、ジルの情報を得る事に成功する。
何とか彼女に接近し、自分の気持ちを打ち明けようとするサムだったが、身分違いな申し出に、ジルは笑って相手にしなかった。
一方、不思議な行動をしているジルを見たサムは、彼女がテロリストの仲間ではないかと疑い出す。

そんなサムは、自宅の暖房装置が故障したため、サービス係りに電話するが、応対は悪く、何故か、その後、拳銃を持った不思議な男が現れ、勝手に、故障箇所を修理してしまう。
彼こそが、指名手配されていたフリーの修理工タトル(ロバート・デニーロ)本人だったのだのだ。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

徹底した管理社会と、それに反抗しようとするレジスタンスたちが同居している一種のデストピアもの。

めぐまれた上流社会の一員ながら、どこかその社会構造自体に馴染めないでいる主人公が、不思議なきっかけで下層階級の人々と接触する事により、新しい価値観に目覚めていく…というものだが、ハリウッド風のハッピーエンドは用意されていない。

レトロフューチャ−のような独特の美術。
ファンタジーの形を借りた、実は果てしなく苦い社会風刺劇といったところか。
イギリスの作品らしい、皮肉の効いた大人向けの作品となっている。

上流社会は上流社会なりに苦悩があり、下層階級は下層階級なりに苦悩がある。

どこにも、安楽な生活などないのだ…といいたげである。

主人公は「愛」に安らぎを見い出そうとするが…、その結末も強烈である。

全編「悪夢」を描いた映画といっても良いかも知れない。

夢の中で、サムを襲う巨大な日本風甲冑武者は、何の象徴なのであろうか?

陽気な「ブラジル」のメロディが、暗い世界観を逆に強調しており、いつまでも耳に残る。