1996年、フランス+スペイン、ジャン・ピエール・ジュネ監督作品。
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とある少年の部屋、暖炉からサンタクロースが降りて来る。
その姿を見て、喜ぶ少年の顔が段々引きつって来る。
何人ものサンタクローズが、一斉に彼の部屋に押し寄せてきたからであった。
そのあまりの無気味さに、少年は泣叫び、それと共にその悪夢を見ていた老人が叫び出す。
どうやら老人は、不思議な装置で、別の子どもの夢を共有していたらしい。
彼は夢を見る事が出来ないため、人一倍老化が早いクローン人間(ダニエル・エミルフォルク)であった。
彼は、脳だけで生きているイルヴィンおじさんや、6人のクローン人間の兄たちと、海上にある油田施設のような実験室に住んでいた。
画面は変わり、場末の港町では、子どもの失踪事件が続出していた。
見せ物で怪力男を演じていたワン(ロン・パールマン)は、まだ幼い弟ダンレー(ジョセフ・ルシアン)と二人暮ししていたが、その弟もある日、突然現れた「一つ目族」の連中によってさらわれてしまう。
弟を追い掛ける内に、ワンは、美しい少女ミエット(ジュディット・ビッテ)率いる子どもの一団と遭遇する。
彼女らは、足先だけがくっついたシャム双子のおばさんが率いる窃盗団で無理矢理働かされていたのであった。
やがて、ワンも又、その怪力を見込まれて窃盗団の仲間に入れられるが、エミットとワンは、互いに心を通じ合わせていく…。
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SFのようであり、下品さも含んだ素朴な寓話のようであり、怪奇幻想譚のようであり、悪夢のようであり、何とも形容し難い、独特のイメージ世界を描く作品。
後に「アメリ」でお馴染みになる赤と緑のイメージカラーが、本作でもあちこちに登場する。
甘さと苦さを混合したような、これが本来の寓話の姿ではないだろうか。
ユーモア感覚も独特で、子どもの感覚をそのまま大人にしたような感じ。
何となく、クラシカルなヨーロピアン冒険小説の系譜も受け継いでいるようでもあり、どこか大人びた子供達による暗黒街ものっぽい雰囲気さえあり、その雰囲気に一旦ハマると虜になってしまう魅力を持っている。
登場して来るキャラクター全てが異色で、魅力に満ちている。
蚤を偏愛する男から、金属製の吸い口を取り付けられた蚤が、リアルに跳び回るリアルな様や、6人のクローンたちが共演している場面など、一見さり気なく見せているが、相当複雑な手順を踏んで作られていると感じる。
イメージも独特なら、デジタル技術の使い方もうまいのだ。
ハリウッド映画とは全く違った個性(くせ)のある世界観、独特の美意識には、観るものの好みによって、好き嫌いがはっきり別れるだろうが、作者には希有な才能を感じさせる。
この世界観を、もっと一般向けに近付けたのが「アメリ」か?
