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からっ風野郎

1960年、大映東京、菊島隆三+安藤日出男脚本、増村保造監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

東京刑務所に到着する一台の車。

刑務所内でバレーボールに夢中だった朝比奈武夫(三島由紀夫)に面会が告げられる。
気を利かせて、彼に代わって面会人と会った友人が、その場で射殺される事件が発生。

暗殺者は、朝比奈が以前、命を狙って失敗し、足を傷つけた相良商事の相良(根上淳)の手の者だった。

たまたま、武夫は翌日が出所日。

彼を迎えにやってきた朝比奈の叔父貴(志村喬)と兄弟分の愛川(船越英二)の目も盗んで、武夫は秘密裏に刑務所を後にする。
相良組の連中も、彼が死んだかどうか確認するために、刑務所の入口で見張っていたからであった。

相良は子分たちに、武夫を探すため、かつて彼が付き合っていたナイトクラブの女、昌子(水谷良恵)を見はるよう命ずる。
さらに相良は、武夫を殺すために、網走帰りのゼンソクの政(神山繁)という無気味な男を新たに雇うのだった。

その頃、武夫は自らが所有する映画館「今春座」の二階に昌子を秘かに呼び寄せていた。

3年振りに戻ってきた武夫は、そこでモギリをしていた小泉芳江(若尾文子)と初めて出会うのだが、彼女は、職場の工場ででストライキを決行中だった兄(川崎敬三)に弁当に届けにいったある日、警官隊たちと、相良が差し向けたヤクザたちと労働者達の三つ巴の乱闘騒ぎに巻き込まれて、そのまま警察に連行されてしまう。

後日、今春座に戻ってきた芳江は、自分が解雇された事を知り、何とか、職場に復帰させて欲しいと、武夫に直談判するのだが、それが二人を男女の仲にするきっかけとなってしまう…。

そんな武夫と芳江が、ガラにもなく遊園地でデートしていた時、全くの偶然から相良のまだ幼い愛娘みゆき(矢萩ふく子)と出会う事になる。

そのチャンスを利用し、武夫はその娘を連れ出すと、相良と取引をしようとするのだったが…。

やがて、そんな武夫も、芳江から子供が出来た事を告げられる…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

作家三島由紀夫が、見栄っ張りだが小心者のヤクザの主人公を演ずる異色作。
三島は、自らが原作を書き深作欣二が監督した「黒蜥蜴」(1968)にもチラリ登場するが、ちゃんと演技者として登場するのは本作だけではないだろうか。

前々から、どうせキワモノだろうくらいにしか思っていなかったのだが、実際に観てみると、なかなかどうして、東映のヤクザ映画とも違う、一種独特の小洒落たヤクザ映画になっていたので驚いた。

三島は確かにうまくはないが、想像していた以上にちゃんと演じている。
どういう経緯で、このような企画が実現したのかは知らないが、主役に抜擢された三島は、監督の指示通り、不器用なりに、きちんと再現しようと生真面目にやっている様子が目に浮かぶようだ。

志村喬や船越英二らと並ぶと、さすがにしろうと臭く、当然ながら演技に余裕などないのだが、川崎敬三辺りの演技と比較すると大して変わらないようにも思える。
ずぶの素人にしては良く健闘しているというべきだろう。

三島が小学校しか出ていない無学な男、船越英二が大学の法学部を出ているインテリヤクザという設定も面白い。

それにしても、志村喬は「ゴジラ」の山根博士、船越英二は「大怪獣ガメラ」の日高教授、凄い共演である。

若尾文子は、さすがに堂々とした演技振り。
船越英二と共に、三島の素人っぽさを良くカバーしている。

特にラストはちょっと印象に残る演出になっており、全体的に大傑作という程の出来ではないが、観て損はない作品といえよう。