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咬みつきたい

1991年、塩田千種脚本、金子修介脚本+監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

テレビの「KNN WORLD NEWS」が、ルーマニア革命で処刑されたチャウシェスク前大統領が、生前、自国のオリンピック選手たちを試合で優勝させるために、ドラキュラの血の研究をしていたと報じている。

そのドラキラの血が何者かに盗まれたとも。

1990年、日本のとある港に停泊中の大型船から、一人の痩身の老人(天本英世)が降りて来るのを、美しい女性(安田成美)が待ち構えていた。その老人、執事の大野は、鞄の中をその女性ゆづ子に見せる。盗まれたドラキュラの血であった。
ゆづ子は、ドラキュラ研究家だった亡くなった父親の影響で、子ども時代からドラキュラに憧れるドラキュラマニアだったのだ。

一方、とある住宅地。
高嶋製薬と厚生省との癒着疑惑に付いてテレビニュースが流れる中、当の高嶋製薬の開発部長石川周太郎(緒形拳)は、妻、絹枝(吉田日出子)に、そんな事、全部嘘っぱちだから気にするなといいながら会社に出かける。

周太郎の娘、冴子(石田ひかり)は、そんな父親の苦労などお構いなしで、夜中遊びつかれて朝帰り。

そんな周太郎は、出先で車にはねられ、病院に運ばれるが、その病院の血液検査係をしていたゆづ子が、こっそり隠していたドラキュラの血を間違えて輸血された後、死亡してしまう。

輸血ミスに気付いたゆづ子は、周太郎の葬式に紛れ込むと、嘆き哀しむ冴子の側に近寄り、「あなたが、もし、処女なのなら、父親の灰に自分の血を振りかければ、一年と三日後に、父親は生き返ると告げて、その場を立ち去るのだった。

半信半疑ながら、実は父親を慕っていた冴子は、遺骨の前に一人でいる時、自分の指を切って、血をかけるのであった。

それから、一年が過ぎ、高嶋製薬の収賄事件は、死んだ周太郎が全ての黒幕だったかのような終わり形をし、前社長(仲谷昇)退陣の後、周太郎の上司だった北村専務(森本毅郎)が新社長におさまっていた。

そんな中、石川家では、一人で留守番をしていた冴子の前に、突然、周太郎が現れる。
生まれたままの姿で…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

日本のドラキュラ映画といえば、天知茂が吸血鬼を演じた新東宝映画「女吸血鬼」(1959)や、岸田森が吸血鬼を演じた東宝映画「呪いの館・血を吸う眼」(1971)などが有名だが、本作も又、異色の吸血鬼映画となっている。

何でも、当時、売れっ子だった緒形拳が、自分に全く似合わない役を一回やってみたいと言い出し、その結果生まれた企画がこれだったらしい。

確かに、緒形拳とドラキュラ役は、ちょっと結びつき難いキャスティングである。

しかし、観ている内に、結構ハマっているようにも見えて来るから不思議だ。

ただ、如何せん、作品の色合いがはっきりしない。

いわゆるホラーではないのだが、かといって、コメディという感じでもない。
社会風刺のような、ファンタジーのような…、ちょっとどっちつかずの印象になっているのが、インパクトを弱めている。

ヒロインも、娘の冴子の方なのか、それとも、吸血鬼になりかけている周太郎を自分の屋敷に連れ込んで、憧れだった吸血鬼との同棲を秘かに楽しんでいるゆづ子の方なのか、これもはっきりしない。

それでも、音楽の大谷幸といい、天本英世や上田耕一など、後に、金子監督の名を一躍押し上げる事になる怪獣映画でお馴染みの面々の登場などがあり、ちょっと、怪獣マニアには嬉しくなるような雰囲気がある。(最後の方で、平成ガメラでお馴染みのあの人も登場!)

ニュースキャスターの森本毅郎のキャスティングもなかなか面白い。
特に、周太郎の葬式の場面で、突然出現してきたゆず子を見て、「彼も生前はなかなかお盛んだったようだね」と、部下の竹林(上田耕一)に呟く所など、御本人が、当時は色々お盛んだった頃で、いわば自虐ギャグなのだ。

全体的に低予算なので、見せ場は多くないが、スーパーマンのように空を飛んで、人を助ける緒形拳の姿は、ちょっと見物である。

安田成美にちょっと気にある同僚として登場する糸井重里は、「宮崎アニメ」繋がり…という事なのだろうか?(安田成美=「ナウシカ」主題歌、糸井重里=「トトロ」でのお父さん役)