1961年、東宝、秋好馨原作、新井一脚本、古澤憲吾監督作品。
秋好馨描く人気漫画の主人公に、当時アイドル的存在だった坂本九が扮するシリーズ2作目。
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いきなり、銀行強盗のシーンから始まる。
しかし、それは町中で行われている映画のロケで、偶然出くわした予備校生のアワモリ(坂本九)と友人のカバ山大学(ジェリー藤尾)は大喜び。
そんな大勢の野次馬の中、監督(中村哲)に、あれこれ、映画の情報を執拗に聞いている男(石川進)がいた。
その後、アワモリと大学は、恩師のダルマ先生(加東大介)と出会い、さらに捨て犬を見つける。
どっちが飼うかと揉めるが、洋品店を営んでいるアワモリのオヤジさん(有島一郎)は断固反対。
結果、危うく、貧しい大学の家の食卓に上りそうになったため、アワモリはその子犬を空き地に置いて、拾ってくれる人を隠れて待つ事にする。
その子犬を拾ってくれたのは、小学校の裏手にある高山邸という、元殿様の家に住む若い女性(森山加代子)だった。
優しく美しい彼女の姿に一目惚れしたアワモリは、何とか彼女と近づきたくて、大学にも協力を仰ぐ。
一方、個人営業の「インスタント芸能社」をやっている大学の父親、万三(丘寵児)が病気で寝込んでしまったため、漫才の相方である母親よろめき(都家かつ江)は、仕事も出来ず、詰め掛ける借金取りに悩まされる毎日。
轟商事という会社の給仕となった大学も、まだ赤ん坊の弟ひろしを背負って、一緒に会社に出なければいけなくなる。
仕事帰りの大学は、又しても、先日の映画ロケと同じ銀行で強盗の現場に出くわす。
実は今度は本物で、逃げるギャングたちの一人が、野次馬の中で見ていた大学とぶつかった際、 大金の詰まった鞄と、ひろしの汚れたおむつの入った大学の鞄を取り違えてしまうのだった…。
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当時テレビなどでも流行っていた『とある町内を中心とした、他愛無い青春人情コメディ』のような内容。
基本的に、登場人物たちが皆明るく屈託がない。
特に、九ちゃんのキャラクターの明るさは、生来のもののように見えて微笑ましい。
主人公達は、何かというと、すぐに歌いはじめるオペレッタ仕立てであるのも楽しい。
ヒロイン役の森山加代子は、あまり芝居はうまくないが、劇中、大学のオヤジさんが「ジンジロゲ」の歌を歌っているシーンがある事から判断して、その曲のヒット直後の出演だったという事だろう。
本作では、アワモリと加代子が付き合うようになるエピソードと、貧しい大学の家に、ひょんな事から大金が転がり込むという、二つのエピソードが平行して描かれていく事になる。
当然、面白いのは後者の方。
本編が映画ネタで始まる事からも分かる通り、後半も『映画の楽屋落ち』がふんだんに出て来る。
テレビアニメ「オバケのQ太郎(初代)」の主題歌でもお馴染みの『キユーピー』こと、石川進(ギャングの一味)は、鞄を間違えた大学の人相を「モンタージュ写真」の要領で作る事を発案、映画雑誌をめくりはじめる。
池部良をはじめ、加山雄三、夏木陽介、佐藤允などといった、当時売り出し中の青春スターたちの写真が出て来る。(夏木と佐藤は、古澤監督初期作品「大空の野郎ども」や「青い夜霧の挑戦状」で主演している。冒頭の映画ロケのシーンでは、監督が主演者の名前を香川雄三と答えている)
さらに、クライマックスの追いかけシーンでは、何と、東宝撮影所がそのまま登場。
卓袱台を囲んで芝居の最中のフランキー堺や水野久美もカメオ出演。
さらに、美術倉庫の中にも入り込むので、東宝の着ぐるみなどもあれこれ登場して来る。
圧巻なのは、初代モスラ(幼虫)の着ぐるみが登場するシーン。
ちゃんと、目の電飾も鳴き声も入っているサービス振り。
大作「モスラ」は、この前年に公開されたばかりだったから、当時の観客はさぞ大喜びした事であろう。
今観ても、このシーンにはびっくりさせられる。
又、有島一郎のセリフに出て来る「私だけが知っている…」というのは、犯人当てを題材とした当時のNHKの人気番組のタイトルで、当時を知るものには懐かしい。
全体としては、添え物映画風の軽い仕上がりだが、映画マニアにとっては、意外な発見が楽しめる貴重な作品になっている。
