1961年、東映動画、森鴎外「山椒大夫」原作、田中澄江脚本、藪下泰司+芹川有吾演出作品。
東映動画の4作目で東映創立10周年記念作品。
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岩本判官政氏(声-宇佐美淳也)は帝から任された領地を管理しながら、美しい妻(山田五十鈴)、娘の安寿(佐久間良子)、息子の厨子王丸(住田知仁)と暮していた。
安寿と厨子王丸は、愛犬蘭丸だけではなく、小熊のモク(大平透)、白ネズミのチョン子(武藤礼子)ら、山の獣たちとも大の仲良し。
そんな岩本判官の元に、上司である鬼倉陸奥の守(三島雅夫)がやってきて、安寿の縁談の話を持ちかけるが、あまりに一方的な申し出に判官は断わるのだった。
しかし鬼倉は、その判官の態度に不快感を持ったまま帰った後、御領地の山で勝手に獣狩りをやり、あげくの果に山に火を放ったばかりか、その咎を全て判官のせいにしてしまう。
その結果、岩本判官は京に呼びつけられ、家屋敷は鬼倉の手に落ちてしまう。
間一髪、家を抜け出した母子たちは、越後の地までやってきたところで、山岡太夫(永田靖)という悪らつな人飼いの男に騙されて、母親と次女の菊乃(利根はる恵)の乗った船と、安寿と厨子王丸の乗った船は引き離されてしまうのだった。
船頭に抵抗した菊乃は海に突き落とされ、彼女は海中で人魚に変身してしまう。
一方、由良港一番の富豪、山椒大夫(東野英太郎)の元に連れられた来た安寿と厨子王丸は、凶暴な太夫の長男、次郎(平幹二朗)や奴頭の権六(富田仲次郎)の命じられるまま、その日から、過酷な重労働をさせられる事になる。
そんな二人に優しい眼差しを注いでいたのは、次男の三郎(水木襄)だけだった。
あまりに理不尽な虐待に耐えかねた安寿は、父のいる京を目指すように厨子王丸を独り逃すと、自分は湖に身を投ずるのであった。
京にたどり着いた厨子王丸は、ひょんな事から、関白藤原師実(山村聡)の娘、あや姫(松島トモ子)と出会う事になるのだが、事情を知った師実の尽力空しく、九州に流されていた父親岩本判官は、すでに病死していたというつらい事実を知らされる事になる…。
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実はこの作品、個人的には、生まれて始めて親に連れて行かれた思い出のアニメ映画である。
私は「モスラ」(1961)を観たいと主張したのだが、母親の独断で、無理矢理こちらに変更させられてしまったのだ。
元々、興味のない映画だっただけではなく、正直、子供にとっては退屈きわまりない内容で、映画館で長い時間我慢していたという苦い記憶がある。
その後も何度か見直しているのだが、最初の印象が特に大きく変わったという事はない。
極めて「真面目な作品」であるとは思う。
日本画風の美術もきれいだし、全体的に丁寧な仕事が施されている。
声優陣も豪華。
厨子王丸の少年時代を担当する住田知仁とは後年の風間杜夫である。
アニメ作品としては、この後、「わんぱく王子の大蛇退治」(1963)の主人公スサノオの声を演じている。
厨子王丸の青年時代を担当するは北大路欣也、さらに、花沢徳衛とか潮健児といった渋い脇役俳優まで参加している。
ただし、そういう豪華さが分かるのは大人だけだろう。
子供にとって、この物語は「救いのない悲劇」以外の何ものでもなく、素直に楽しめるような種類の内容ではないと思う。
何故当時、このような暗い話がアニメの企画として持ち出されたのか疑問である。
親達の目や、海外での賞狙いだったとしか考えられない。
「親が子供に観せたい名作」というのは、往々にして「子供にとっては観たくない作品」である事があるという好例ではないか。
決して悪い作品ではない。
どちらかというと、大人のアニメ好きにお薦めしたい作品といえよう。
