TOP

映画評index

ジャンル映画評

シリーズ作品

懐かしテレビ評

円谷英二関連作品

更新

サイドバー

若ノ花物語 土俵の鬼

1956年、日活、北島隆三原作、松下東雄脚本、森永健次郎監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

戦後、相撲取りの人材不足に悩み、青森の横手大五郎(吉田光男)という17才の青年をスカウトに来た大ノ海(坂東好太郎)は、巡業で立ち寄った室蘭の地で、元男岩を名乗っていた、引退した関取(天草四郎)の旧友の訪問を受ける。

彼がいうには、当地の駅で働いている青年にすごい逸材がいるらしい。

花田勝治(青山恭二)というその青年は、力仕事で、親と七人の弟妹の生活を、たった一人で支えていた。

その人並みはずれた資質を認めた大ノ海は、さっそく父親(澤村國太郎)に会いに行くが、稼ぎ頭を失っては生活できないと、彼は頑として承知しなかった。

横手を連れて東京に戻った大ノ海は、さっそく、期待の彼をしごくが、その横手山は練習中に足を負傷、1年くらい休養が必要と医者から言い渡される。

落胆する大ノ海の元に、あの勝治が弟子にしてくれと訪ねて来る。
母親の口利きで、頑固だった父親も折れたのであった。

勝治は、大ノ海の若い頃のしこ名「若ノ花」を譲り受け、さっそく練習を始める。
そんな部屋に無理して帰ってきたのが横手山。
彼は、新入りの若ノ花とたちまち意気投合するが、やはり、負傷した足は完治せず、途中で帰国する事になる。

一方、練習熱心な若ノ花(若ノ花本人)は、昭和21年秋場所初土俵以降、めきめきと頭角を現していく。

昭和24年、若が十両に昇進した頃、花籠親方となった大ノ海の妻(広岡三栄子)が、疎開先の九州から上京、親方と一緒に知人の家に住む事になる。

ある日、その家を訪ねてきた若は、茨木から洋裁を習うために上京していた親戚の娘、香代子(北原三枝)と出会う。

たちまち、互いに惹かれ合った二人は、やがて、デートを重ねた後、結ばれる事になる。

昭和30年、関脇に昇進した若は、父親死亡の電報を受け取るが、巡業中という事もあり、帰郷しないで頑張り抜く。

翌31年、大関になり、夏場所に初優勝した若は、故郷室蘭に錦を飾るのだが、そこで、懐かしい横手(衣笠一夫)と再会、互いの可愛い子供を紹介しあう若であったが、その後、順風満帆に見えた彼に信じられないような悲劇が待ち受けていた…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

若貴兄弟の伯父に当たる若ノ花の半生を、途中から本人が登場して描く、いわば「再現ドラマ」。

土俵上で繰り広げられる試合の数々は、皆、実際の貴重な記録フイルムである。
朝汐、鏡里、栃錦など、往年の名力士が次々に登場して来る。

単なるサクセスストーリーならともかく、クライマックスの悲劇は実話である。
しかも、映画の展開から考えると、撮影直前の事件だった事になる。
良く、本人自らが、そんな辛い経験を演じる事を承知したものだと思う。

他人に、身内の悲劇を演じられるくらいなら…という事だったのであろうか?

途中で登場する弟、若緑は本人らしい。

その下の弟として登場していた一人(こちらは役者、本人ではない)が、後の貴ノ花(若貴兄弟の父親)という事になる。

大関になった若が、記念写真を撮るシーン、二人の若者が写真屋として登場する。
長門裕之、津川雅彦兄弟である。

津川雅彦など、まだ紅顔の美少年といった趣。

まだ、テレビが普及していなかった時代ならではの、スポーツヒーロー紹介映画といえよう。