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牛若丸

1952年、松竹京都、八住利雄脚本、大曽根辰夫監督作品。

▼▼▼▼▼最初にストーリーを書いていますので、ご注意ください!コメントはページ下です。▼▼▼▼▼

美空ひばり自身が企画した作品らしく、彼女が主役の牛若丸と、それを慕う桔梗の二役を演じた歴史ロマン。

1100年代の後期、源義朝は平家に殺害され、その妻、常盤御前(水戸光子)も幼子二人を連れて逃亡の旅に出ていた。

やがて、幼子の内、一人は鞍馬山へ、もう一人は醍醐へ身分を隠して預けられ、常盤御前自身は平清盛に捕まり、幽閉同然の生活を余儀なくされてしまう。

時は流れ、鞍馬山の東光坊(薄田研二)に預けられた牛若丸(美空ひばり)は、凛々しい若者に成長していた。

母親は生まれた時に亡くなったと教えられていたので、牛若丸の日課は、仏教関係の本を読む事と、山中にある、その母親の墓に通う事であった。

かつては源氏方の侍だったが、今は清盛に加担する身となっていた監視係の新田ノ太郎吉光(月形龍之助)の娘桔梗(美空ひばり-二役)は、牛若と子供時代から同じように成長してきた事もあり、兄妹のように彼を慕っていた。

一方その頃、悪行三昧の仲間達の振舞いに嫌気がさした一人の僧兵が、山を降りて単独行動を取る事になる。
武蔵坊弁慶(水島道太郎)であった。
彼が唯一心を許していたのは、兄を亡くしながらも、常盤御前の元で健気に働いているなぎさ(桂木洋子)という娘だけだった。

そんな弁慶は、偶然にも追っ手たちから逃げる途中だった源氏の残党達と出会う。

やがて鞍馬山に、源氏の正近(堺駿二)らが入り込み、牛若丸に出会うと、彼の母親が生きている事、彼を新しい源氏の大将として決起しようとしている事を知らせる。

牛若丸は、そんな源氏の残党、特に四天王と呼ばれる男達を相手に、秘かに山中で武術の腕を磨いていく。

しかし牛若丸の一番の願いは、生きている母親に会う事。
その後偶然、常盤御前の前で身分を隠して披露する事になった稚児舞いの席で、思わず「母上!」と呼び掛けてしまう。
しかし、その牛若に帰ってきた御前の言葉は冷たいものであった。
平家の侍達の直中で、牛若の命を守りたい一心から出た言葉であった。

しかし、その母親の言葉の真意をつかみ切れない牛若は、悲嘆にくれたまま五条の大橋に差し掛かると、そこに一人の巨魁が立ちふさがっていた。

弁慶であった…。

 

▼▼▼▼▼個人的なコメントはここから下です。▼▼▼▼▼

一言でいうならば、「母もの映画」である。

一応、牛若丸が成長し、源氏の残党達と決起するまでが描かれているが、物語の根底にあるのは、母親を慕う少年から青年に移行する途中の牛若の苦悩である。

それに、そんな牛若を慕う桔梗の苦悩と、常盤御前の側の苦悩…、どちらにしても、女性好みの心理劇が中核となっている。
男性陣は、あくまでも脇を固めているだけといった印象。

真面目な文芸ものに近いテイストで、ほぼ史実に忠実に描かれているようであるが、テンポも緩やかで、全体のトーンも暗く、劇中、ひばりの歌なども披露されるが、娯楽映画としての爽快さなどは希薄である。

どちらかというと、女性のひばりファン向け作品ではないかと思う。

牛若丸と桔梗が一緒に画面に登場する合成シーンも多い。